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2022 年度 実施状況報告書

元代の海商・船戸と東アジア海域の海運・貿易に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K00920
研究機関近畿大学

研究代表者

矢澤 知行  近畿大学, 国際学部, 教授 (60304664)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード元代 / 社会経済史 / 船戸 / 海商
研究実績の概要

本研究の目的は,元代における船戸と海商の具体像を分析することにより,黄海や東シナ海で行われた海運や貿易とそれらの接続関係を解明するとともに,そうした海上活動がモンゴル時代の巨大なネットワークの中でどのような位置づけにあったのかを探ることにある。
今年度は,元代における船戸と海商に関する研究に関する基礎史料と先行研究の再検討を進めるとともに,国内外の多様な史資料の蒐集を行い,その整理と講読を進めた。例えば史料としては,『至正崑山志』『弘治常熟県志』などの地方志や,鄭元祐・朱徳潤などの撰した文集などが挙げられる。先行研究については,2010年以降に中国で公刊された関連論文約20件について,その内容の検討・再検討を行った。
続いて,14世紀前半以降にさかんに活動した船戸に着目した研究を進めた。湖州・長興の費氏,平江・常熟の曹氏,カン(さんずい+敢)浦の楊氏などがそれにあたる。これらの船戸の動向や,海運万戸府の官吏の任命状況などをもとに考察を行い,研究論文「元代における海運運営体制の展開」を執筆した。
今後は,元代の海運に従事した船戸だけでなく,黄海・東シナ海貿易に参画した海商の活動状況と彼らの具体像を明らかにするとともに,海運と黄海・東シナ海貿易や,東シナ海貿易と南海貿易の接続関係を,航路を往来した人・モノ・情報の面から分析することによって,モンゴル時代における東アジア海域交流の歴史的意義を解明することをめざしたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在まで,14世紀前半以降にさかんに活動した船戸に着目した研究を進め,その内容を研究論文「元代における海運運営体制の展開」としてまとめた。
同論文では,まず,元代の海運をめぐる国内外の先行研究の成果を整理し,それらをさまざまな角度から検証し,研究上の課題を示した。その上で,海運に関与した人びと,例えば元朝から派遣された監督官,その下で実務に携わった幕僚官,現場で海運を担った船戸などが,それぞれどのような役割を果たし,それがどのように変化していったのかを分析した。結論として,元代の海運運営体制に関する次の5つの時期区分を提示し,それぞれの時期の特徴についても明らかにした。
A 海運の開始から朱清・張セン(王+宣)の失脚まで(1283-1303年),B 新興船戸の登場と海運運営体制の再構築(1304-19年頃),C 海運運営体制の完成と強化および財務行政部門化の進行(1319-35年頃),D 海運運営体制の動揺と改革(1335-51年頃),E 海運運営体制および江南支配の崩壊(1352-68年)
本年度とくに進捗した研究内容は以上である。

今後の研究の推進方策

今後の推進方策としては,まず,元代の末期にかけての海運運営体制について不明な課題がいくつか残されたので,その再検討に着手したい。上述の時期区分のDとEの時期に関する研究の継続である。
次に,元代の海運に従事した船戸だけでなく,黄海・東シナ海貿易に参画した海商の活動状況と彼らの具体像を明らかにする作業を進めていく。海運だけでなく,より広範囲な航路にも目を向け,そこを往来した人・モノ・情報の面から分析する。そして,海運と黄海・東シナ海貿易や,東シナ海貿易と南海貿易の接続関係を解明することをめざしたい。
そのためには,国内外の研究資料・史料の渉猟が不可欠である。ひきつづきそれらの収集を行いつつ,研究を進めていく計画である。

次年度使用額が生じた理由

(理由)支出が年度末の時期に集中してしまい,また,物品費などを計上することができなかった。
(使用計画) 今回生じた次年度使用額は比較的少額なので,次年度の配分額と合算して,物品の購入などに使用する計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] 元代における海運運営体制の展開2023

    • 著者名/発表者名
      矢澤知行
    • 雑誌名

      Journal of International Studies

      巻: 8 ページ: 61-85

    • オープンアクセス

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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