研究課題/領域番号 |
22K00957
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
根津 由喜夫 金沢大学, 人文学系, 教授 (50202247)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ビザンツ / アドリア海 / 中世イタリア |
研究実績の概要 |
当初の計画では、今年度は、南イタリアの旧ビザンツ領地域(プーリャとカラブリア)、およびアドリア海対岸のギリシア北西部イピロス地方とイオニア諸島の現地調査を行うことを予定していたが、日程上の理由からギリシア北西部の調査活動は次年度に持ち越すことにして、南イタリアにおける調査を重点的に行うことに計画を一部、修正した。南イタリアの同地域は、イタリア本土の中でもビザンツの政治的・文化的影響が長く残存した地域であり、東方正教系の修道院の活動も盛んであったことが知られている。また、これらの地域の教会や修道院にはビザンツ・東方由来のイコンや聖遺物などが各地に伝存していることが近年の研究でも明らかになっており、今回はそうした東西交流の歴史的遺産を現地でつぶさに調査することがもっとも重要な課題となった。他方、ローマ教会の陣営でも当地において絶大な威信を誇ったモンテ・カッシノ修道院も11世紀にはビザンツ密接な関係を結んでおり、東西両勢力の関係は様々な側面から看取することができるのである。今回の調査旅行では、当初、予定していたプーリャ地方の小都市所在の史跡や郊外の教会、修道院施設などに調査活動を行い、さらに調査の領域を隣接するカンパーニア地方にも拡大することができた。そうしたなかでも、プーリャのアドリア海沿岸部の諸都市のロマネスク期の教会・聖画像や同地域内陸部の岩窟教会壁画の調査に関してはかなり有用なデータを得ることができた。これらに関しては、さらにデータ量を増やしつつ、さらに綿密な分析を加える予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の期間中、長く実施できなかった海外調査を前年度に続けて実施できたことの意義は大きい。2023年夏季に実施した調査旅行では、イタリアのアドリア海沿岸部を中心におよそ2週間にわたり古代末期から中世ロマネスク時代の史跡や関連する遺物を収蔵する博物館等を巡り、実地調査と資料の収集に従事することができた。それらは現在、整理、分析中であり、現時点ではいまだ公表に至ってはいないが、それらについても作業は滞りなく進行しており、現状において、研究活動はおおむね順調に進捗していると判定することができると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年の南イタリア調査において取りこぼした幾つかの史跡に関して改めて詳しく調査を行うと共に、アドリア海対岸のギリシア北西部イピロス地方とイオニア諸島についても詳細な調査を行いたいと考えている。後者の地域に関しては、中世後期、エペイロス君侯国時代の史跡を中心に調査を進め、現地の支配エリートの存在形態や彼らの政治的イデオロギーについて考察を進めていく予定である。これらの地域ではアドリア海西岸部とは逆にイタリアからの様々な政治的・文化的影響があったことがかねて指摘されており、この旅の現地調査においても、そのあたりの状況を詳細に調査してみたいと現時点において考えている。また、昨年度の調査成果を検証した結果、南イタリアについても補足的な調査を行う必要性を感じており、これに関しても鋭意、計画を進めたいと考えている。具体的な対象となるのは、ローマの初期中世の教会群、カンパニア地方カセルタ近郊の聖プリスコ教会、カラブリア地方、聖デメトリオ・コローネ村の聖アドリアーノ教会、プーリア地方、レッチェ近郊の聖クリスティナとマリナのクリプトなどである。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ・ウィルスの流行の影響で先行する科研の資金が一部、持ち越しもあり、そちらの消化を優先させたことがこのたび次年度使用額が発生した理由のひとつである。今年度はもはや新型コロナの影響の残滓も一掃され、完全に平常の状態に復して研究活動を行えるものと思われるため、繰り越し分についても有用に活用できるものと考えている。
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