東北地方の縄文時代から弥生時代過渡期の狩猟採集社会の変容について、近年の発掘調査により当該期の良好な資料が増加している宮城県北部の大崎平野の遺跡群を対象に、穀物栽培技術等の導入を含む多角的生業経済の観点から解明することを目的として本研究を実施した。特に、古環境復元や、穀物栽培等の植物利用の推定、周辺地域との物流・交流の様相について研究を推進した。 2022年度は、宮城県北部の大崎平野北縁部に位置する縄文・弥生過渡期遺跡群のうち、遺物が多くまとまって出土している、いもり塚周辺遺跡と通木田中前遺跡を対象に、野外調査及び出土遺物の各種調査を実施した。 野外調査では、通木田中前遺跡の4地点で植物資料の採取を目的としたボーリング調査を実施し、各種分析のための土壌を採取した。採取した資料については、外部の分析機関に委託して、花粉・植物珪酸体・珪藻・大型植物化石の各種分析を実施した。また、北小松遺跡では圃場整備の付帯工事に合わせて、遺物包含層から試料(土壌)を採取している(分析は今後実施予定)。さらに、いもり塚周辺遺跡で簡易的なボーリング調査を実施して、遺物包含層の堆積状況を確認し、調査候補地点の選定を行うことで今後の調査計画を策定した。 出土遺物の各種調査については、栽培植物の推定を主な目的として、石器使用痕分析や土器圧痕調査を実施した。また、石器石材や土器付着物等の自然科学的分析を実施し、これらの遺跡の形成年代や、生活集団の食性、同時期における周辺地域(特に、農耕社会の影響を受けた地域)との物流・交流について検討を進めた。 本研究の成果のうち、石器石材については、外部機関での講演会や東北歴史博物館での講座、学術雑誌で報告した。その他の研究成果については、今後、学会発表や東北歴史博物館の講座、研究紀要等で報告する予定である。
|