研究課題/領域番号 |
22K01008
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
島田 潤 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, アソシエイトフェロー (00910259)
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研究分担者 |
渡辺 祐基 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部博物館科学課, 研究員 (20825583)
小峰 幸夫 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, アソシエイトフェロー (50791985)
佐藤 嘉則 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 室長 (50466645)
木川 りか 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部博物館科学課, 課長 (40261119)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シミ / 文化財害虫 / 分布調査 / 生態 / 新規防除方法 |
研究実績の概要 |
博物館施設や文書館などから見つかった日本未記録種と考えられるシミの同定を行った。その結果1910年にスリランカで発見され、南米やヨーロッパで生息地の拡大を続けているCtenolepisma calvumという種であることが判明し、「ニュウハクシミ」と和名を提唱した。本種は幼生の段階で既知種であるヤマトシミやオナガシミと酷似しており、同定を簡易化するために国際的なデータベースにニュウハクシミのDNA(COI遺伝子領域)配列を登録した。 ニュウハクシミは繁殖力が強いことが考えられ、これまで日本で確認されている既知種のシミとは生態的に大きく異なることが想定される。本年は本種の生態を解明するために人工飼育を確立し、現在飼育条件下において生態の観察を進めている。 また、新たな駆除方法についても検討を行った。シミ類は資料にとどまって食害を続けるような種類の害虫ではなく、建物の中の広範囲に生息している。そのため資料自体の燻蒸のような殺虫方法ではあまり効果がない。またシミ類はゴミやホコリに含まれるたんぱく質を栄養源として生きていくことが可能なため長期的な対策が必要となる。そこでニュウハクシミのような強い繁殖力を持つシミの対策方法として設置型のベイト剤(毒餌)による駆除方法の検討を行い、結果を報告した。 さらに日本国内のニュウハクシミの分布調査も進めている。本種は日本国内のかなり離れた地域から記録されており、すでに日本の広範囲に生息地を拡大している可能性がある。そこで日本国内の侵入状況を明らかにするため、全国の博物館施設と連携して館のモニタリング調査時に捕まったニュウハクシミを対象に日本国内の分布調査を行った。本年において調査として集まったデータはまだ少ないため、ニュウハクシミの認知も含め、来年度以降も継続して分布調査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初計画通りに進行しており、成果も順調に上がってきている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで知られていなかった昆虫のため認知に時間がかかっており、全国の分布情報の収集が遅れているが、セミナーや研修などを通じて広く周知していくことで全国の分布調査を効率的に進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
飼育用の物品の購入を来年度に回したため次年度使用額が生じた。来年度の飼育用物品の一部として使用する予定である。
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