研究課題/領域番号 |
22K01013
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研究機関 | 九州歴史資料館 |
研究代表者 |
小林 啓 九州歴史資料館, 学芸調査室, 研究員(移行) (20638457)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 有機物痕跡 / 解剖学的形質 / 考古資料 / 木炭木棺墓 / 鉄釘 / 古代(平安時代) |
研究実績の概要 |
本研究は考古資料に付着した有機物の痕跡から遺物本来の姿を復元することを目的としている。研究遂行にあたり復元の対象として釘付木棺墓を選定し調査を実施した。調査は、古代(平安時代)の釘付木棺墓である木炭木棺墓・木槨木棺墓・木棺墓を対象として、これらの墳墓から出土した鉄釘に付着する有機物の痕跡について解剖学的形質による分類を実施した。 研究初年度(令和4年度)に調査を実施した墳墓は8遺跡8基である。墳墓の考古学的な分類区分による内訳は、木炭木墓5基、木槨木棺墓1基、木炭墓2基である。木炭木棺墓は、宮ノ本遺跡(福岡県太宰府市)・堀池遺跡(福岡県筑紫野市)・東中谷遺跡(奈良県高取町)・大谷遺跡(滋賀県多賀町)・新保遺跡(新潟県上越市)、木槨木棺墓は馬場遺跡(島根県三刀町)、木棺墓は君畑遺跡(福岡県太宰府市)、門田遺跡(福岡県春日市)である。 墳墓から出土した鉄釘は、木棺を構成する2枚の材を緊結する機能を有するため、鉄釘の頭部側と先端部で付着する有機物の痕跡が異なる。これらを顕微鏡で拡大観察し、解剖学的形質により分類した。解剖学的形質の分類により、木棺の基本的な構造、木棺を構築する板材の種類、木取り、樹種など復元に至る科学的根拠を得た。 木棺に使用する鉄釘は30~40本未満であり、各墳墓で共通している。木棺の基本的な構造は、小口板・側板・底板・蓋板の6枚で構成しており、小口板と側板が組継ぎとなる傾向が多い。この他、木棺の樹種はスギ・ヒノキ等の針葉樹を用いているが、新保遺跡の木棺では、棺身(小口板・側板・底板)は針葉樹だが、棺蓋は広葉樹(散孔材)であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において墳墓から出土した鉄釘の調査は20遺跡20墳墓を予定している。研究初年度において全体の約半数が終了しており、研究は当初予定どおりおおむね順調に進展している。有機物痕跡の解剖学的特徴による分類は、既存の顕微鏡により復元根拠となる木材組織の構造を識別可能であり、観察・分類に際し研究手法の変更を行う必要はない。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目(令和5年度)も九州福岡エリア及び関西エリア(京都・奈良)を中心に墳墓より出土した鉄釘の有機物痕跡について調査を実施する。研究2年目に調査を実施する墳墓は、安祥寺下寺跡(京都府京都市)・西野山古墓(京都府京都市)・西山遺跡(京都府木津川市)・仁王手遺跡(福岡県春日市)など10遺跡10墳墓を予定している。 また、奈良時代の墳墓である、伽山遺跡・御嶺山古墳(大阪府太子町)等についても同様の調査を実施する必要がある。この他、研究実績の中間報告として日本文化財科学会等の国内学会において研究成果を報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大による行動制限により、物品の購入や調査に若干の影響を受けた。次年度は、新型コロナウィルスの5類感染症以降に伴い行動制限が解除されたため年度当初より予定通り研究を遂行する。
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