研究課題/領域番号 |
22K01024
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研究機関 | 神奈川県立生命の星・地球博物館 |
研究代表者 |
加藤 ゆき 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 情報資料課長 (70342946)
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研究分担者 |
田口 公則 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (70300960)
大島 光春 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (40260343)
石浜 佐栄子 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (60416047)
大坪 奏 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 非常勤学芸員 (40598041)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ハンズオン展示 / ハンズオフ化 / 発話 / 展示評価 |
研究実績の概要 |
多くの博物館施設で導入されているハンズオン展示は、ハンズオフ(観覧主体型)展示に比べ利用率、滞在時間ともに長い傾向がみられ、積極的に展示を注視する傾向があることが報告されている。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、ハンズオン展示はほぼ全て『触れることができない(ハンズオフ化)』展示として制限されてきた。 本研究は、ハンズオン展示のハンズオフ化がどのように利用者に影響したのか、そもそも展示自体が利用者にどのように受け止められているのか、それからどのようなことを学んでいるのかを調査、解析することにより、展示企画側が意図し考察すべき課題を明らかにして、より多くの利用者が興味・関心をもつ展示活動の実践に寄与することを目的として実施してきた。 令和5年度はハンズオフを解除したハンズオン展示において利用者の行動観察を行うとともに、直感的・感覚的な感想である『発話』データの収集をすすめた。結果、利用者の約7割が展示の前に立ち止まり、その多くで『指さし行動』が見られ、標本を『触る』、『細部を目視により観察する』のほか、『発話を手掛かりに標本を探す』といった積極的行動も見られた。発話内容として、多くが展示タイトルをそのまま読み上げ、続いて標本の形状(大きい、丸い、つやつやしている、形が違う)を話し合っていた。なかには、同一コーナー内にある標本の種類について話す利用者もいた。家族グループでは子どもから大人に対して疑問(なぜ?どうして?)が投げかとともに、子どもが解説パネルから得た情報を大人に伝えるといった場面も見られた。発話は子どもを連れた家族グループで多く見られ、遠足などの子どもを主とした団体や大学生のグループではほぼ行われず、グループの人員構成による違いが見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
入館者への書面アンケート調査を計画どおり進めることができなかった。一方で、ハンズオフを解除したハンズオン展示での来館者行動調査や発話採集を複数回にわたり実施した。 (1)『書面による利用者の基礎情報の収集』については、接触制限などの影響により計画通り実施できなかったため、令和6年度以降に改めて手法を含めて検討をする。 (2)『行動観察及び発話採集による評価素材の収集』については、予定通り実施することができた。 (3)『観覧後のアンケートによる評価素材の収集』については、対面でのアンケート調査を実施した。しかし、計画通りのサンプル数を集めることができなかったため、令和6年度に来館者行動調査とあわせて実施を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 評価素材の解析とハンズオン展示評価の試み これまで収集してきた評価素材を解析し、ハンズオン展示の評価を試みる。評価素材には満足度や閲覧時間といった数値化しやすいものと、自由意見や閲覧時の行動や動線、会話など数値化が難しいものとが混在する。観覧時の行動や動線はアンケート結果との関連度を解析、自由意見や会話にはテキストマイニング法を用い、単語・文章の出現の頻度や共出現の相関、出現傾向などを抽出、解析することにより概要把握を行う。これら評価素材から共通ファクターを抽出し、ハンズオン展示の評価を試みる。 (2)『新たな』ハンズオン展示の在り方の検討と提案 得られた評価をもとにハンズオン展示の在り方と、当館としての展示の方向性を検討し、報告書としてまとめる。当博物館は開館してから20年以上経過し、現在、展示更新の検討を始めている。そのため、本研究で得られた成果は、最終的に展示更新を前提とした提言としてまとめ、更新の基本設計への活用を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者との打ち合わせや参加を予定していた学会がオンライン開催となり、謝金及び旅費が不要となったため。次年度に研究協力者への謝金や研究データ入力のための人件費として使用予定である。
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