研究課題/領域番号 |
22K01026
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研究機関 | 北九州市立自然史・歴史博物館 |
研究代表者 |
真鍋 徹 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (90359472)
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研究分担者 |
蓑島 悠介 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (80714435)
中原 亨 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (10823221)
中西 希 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (40452966)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 里山景観 / 生物間相互作用 / 展示用資料作製法 / 視覚化・知覚化 / 情報伝達手法 |
研究実績の概要 |
研究目的達成に向けた実施項目の一つである暖温帯域における「かつての里山および現在の里山における、人の活動、植生・景観構造・生物相、生物間相互作用の把握」に向け、以下を主とした調査、調査手法の検討・試行を実施した。 ①調査対象地である山田緑地(北九州市)の管理者との聞き取りなどを通じ、弾薬庫などとして利用される前である第二次世界大戦以前の当緑地は、田畑や薪炭林を伴う農村が存在していたことが明らかとなった。これをうけ、農村であった時代における土地利用や景観の図化に向け、追加資料の探査などを行っている。 ②山田緑地において、かつての里山の復元を目的に植生管理を実施している区域(伐採区:かつての里山を想定)で、伐採後の植物相や植生の変遷を把握するための調査を行った。その結果、かつての里山における植物相や植生を推測するための基礎データ、およびかつての里山林を復元するための管理手法構築のための基礎データを得ることができた。得られたデータから、かつての里山の主要樹木であるコナラは、伐採後、ほとんど萌芽再生していないことが判明した。これは、当緑地に現存しているコナラの多くは、里山施業停止後に放置され、萌芽再生能力が低下する樹齢に達していたためと推測された。一方、埋土種子から発生したアカメガシワなどの先駆性樹種が高密度で再生し、シロダモなどの常緑広葉樹も伐採個体から萌芽再生していた。これらのことから、コナラなどのかつての里山の主要構成樹種を中心とした森林の復元には、再生した樹木を種選択的に伐採する必要があると考えられた。 ③伐採区および隣接する非伐採区(現在の里山)における鳥類相および哺乳類相を把握するため、自動撮影カメラを設置し、データ収集を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、暖温帯域における「里山のすがた」を博物館の来館者に科学的かつわかりやすく伝え、知覚してもらうことのできる汎用性の高い展示手法を構築することである。 この目的の達成に向け、本研究では、①里山の利用状況・植生・景観構造・生物相の把握、②生物間相互作用の把握、③展示資料作製法の開発、④展示資料の見せ方(情報伝達方法)の確立、⑤展示効果の検証と展示手法の標準化を実施する。 研究初年度は、山田緑地(北九州市)を調査対象地とし、上記①を中心とした研究計画を策定した。このうち、植生・景観構造・植物相の把握は、ほぼ予定どおり実施することができた。一方、現在の調査対象地の昆虫・鳥類・哺乳類相把握に向けた調査は、研究代表者および分担者の勤務する博物館が開館20周年を迎えたことに伴う業務が想定以上に多かったことなどのため、やや計画どおりに実施することができなかった。ただし、当該年度第4四半期以降は、鳥類・哺乳類相把握および生物間相互作用把握手法検討に向け、伐採区(かつての里山を想定)および隣接する非伐採区(現在の里山)に自動撮影カメラを設置し、継続的なデータ収集を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目にあたる2023年度は、かつておよび現在の里山における生物相、特に昆虫類・鳥類・哺乳類相の把握に向けた調査を加速させる。また、かつての人による里山の利用状況をより具体的に現出するための聞き取り調査や文献調査も継続する。 生物相の把握とあわせ、伐採区(かつての里山を想定)および隣接する非伐採区(現在の里山)において開花・結実している植物の種類把握や、それら植物を利用する生物相の把握を行い、かつておよび現在の里山における生物間相互作用を検討する。 また、「里山のすがた」を科学的にわかりやすく伝えるための展示資料の収集を行う。あわせて、収取した資料の見せ方(情報伝達方法)を検討し、展示用資料のモック(試作品)を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度は、新型コロナウイルス感染症が収束しないなか、研究代表者および分担者が勤務する博物館において、通常の博物館活動再開に向けた業務を加速させたことに加え、当博物館の開館20周年記念に係る常設展示リニューアルなどの業務が想定以上に多かった。このため、調査研究に充てる時間が予想以上に制限されたため、計画どおりの研究費執行が行えなかった。 令和5年度の未使用研究費は令和6年度の研究費と合わせ、これまでに得られたデータの解析結果を基に検討する野外調査の頻度と確度の向上のための機材の維持や購入に充てる。また、令和5年度に得られた調査結果に基づく学会発表などの成果公開を行うために使用する。さらに、より効果が高くかつ汎用性の高い展示資料作成のため、展示用資料のモック作成費用に補填する。
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