研究課題/領域番号 |
22K01040
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
橋本 雄一 北海道大学, 文学研究院, 教授 (90250399)
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研究分担者 |
深田 秀実 小樽商科大学, 商学部, 教授 (40547866)
塩崎 大輔 北海道大学, 文学研究院, 専門研究員 (90910399)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | GIS / 千島海溝地震 / 津波避難 / ホワイトアウト / ブラックアウト / 積雪寒冷地 / 地理空間情報 / マイクロジオデータ |
研究実績の概要 |
本研究は,高い危険性が指摘されている千島海溝を震源とした巨大地震による津波を想定し,「平成30年北海道胆振東部地震」の際に発生したブラックアウト(広域電源喪失)や積雪寒冷地特有のホワイトアウト(豪雪や吹雪による視界不良)を考慮して,GISとマイクロジオデータを用いた津波避難行動モデル化のための統合情報システムを構築し,それによる防災上の課題の明確化を目的としている。 2022年度には,千島海溝地震による津内被害が最大と予想される北海道釧路市(北海道発表の津波被災想定12万人)を対象地域として,北海道太平洋沿岸地域について時空間データベースを構築した。そのため,2021年7月に北海道が公開した津波浸水想定に関するマイクロジオデータを可視化し,さらに基盤地図情報,国勢調査,都市計画基礎調査,避難場所,道路ネットワークなどを入力してデータを統合した。 また,独自に開発するバーチャル・リアリティ(VR)津波避難システムで仮想空間の津波避難実験をウェブベースで行った。この分析では避難開始の意思決定に注目し,ネット情報だけでなく,防災無線などの情報が重要となることを明らかにした。 さらに,地理空間情報により避難困難地区を推定し,そこの居住者の集団避難を対象に,独自に開発する位置情報データ収集アプリで移動履歴データを収集し,移動モデルの構築を行った。その結果,新想定では避難が困難となることを明らかにした。 その他に,避難場所の収容能力に注目し,定員を超えた避難者の他避難場所への再配分などについて研究を進めた。これらにより千島海溝地震による津波災害時の防災上の課題を明確化する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロジオデータによる津波災害に関する時空間データベース作成,避難開始の意思決定(避難スイッチ)モデルの構築,避難移動に関する実証的空間モデルおよびシミュレーションモデルの構築,避難所内での滞在モデルの構築,モデル群の統合,統合モデルにおけるホワイトアウトやブラックアウトの影響分析,防災上の課題を明確化などについて,釧路市の分析をほぼ終えている。 ただし,データの不具合が残っている可能性があり,今後も点検しつつ分析を進める。また,2020年国勢調査の年齢階級別昼間人口の小地域データが入手できた場合,このデータを用いて分析の一部をやり直す可能性もある。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には北海道太平洋沿岸で2番目に津内被害が大きいと予想される苫小牧市(津波被災想定10万人),最終年である2024年度には3番目に大きいと予想される函館市(津波被災想定7万人)を対象地域として,マイクロジオデータによる津波災害に関する時空間データベース作成,避難開始の意思決定(避難スイッチ)モデルの構築,避難移動に関する実証的空間モデルおよびシミュレーションモデルの構築,避難所内での滞在モデルの構築,モデル群の統合,統合モデルにおけるホワイトアウトやブラックアウトの影響分析,防災上の課題を明確化などを進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
1月と3月に出張を行ったが,その際の旅費が予定より安価であったことで残額が生じた。また,3月上旬に,VR教材作成のため,積雪時の避難路についての映像資料収集を収集することを目的とした出張を行う予定であった。しかし融雪が早く,作業を行うことができなかったため出張を中止し,この理由でも残額が生じた。
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