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本研究の目的は、地理学的視点から多拠点居住者の居住地選好と拠点間の関係を考察して、具体的にどのような人物が、どのような目的で、多拠点居住を実践しているのかを明らかにすることである。 本研究では多拠点居住者を、①性別は問わずに18歳以上であること、②調査時点で島嶼部を除く東京都内および神奈川県横浜市、川崎市内に在住していること(以下、自宅1と略す)、③自宅に加えて、日常的に滞在・仕事をする別の住居も使用していること(以下、自宅2と略す)と定義した。この定義に従って本研究では、インターネット回答者のパネルを持つ調査会社に質問紙調査を委託し、2024年1月31日から2月5日までに有効なサンプルを608人収集した。 質問紙調査を実施した結果、30歳代から 60歳代までの主にオフィス従事者のアッパーミドル層から構成される本研究の多拠点居住者は、自宅1からみて自宅2が近距離に所在する人と、遠距離に所在する人の2群に大別することができた。前者は拠点間の距離が近距離であるため、往来頻度が高く、在宅就業や通勤、リモートワークなど業務を中心とした活動に利用されているが、各拠点の明瞭な使い分けは確認できなかった。一方、後者は拠点間の距離が長距離になるため、往来頻度が低く、自宅1が業務や日常生活で利用されているのに対して、自宅2は趣味や片付け・整理、介護などに利用されており、目的や用途に応じて各拠点を使い分けている実態が確認された。 したがって、いつでも、どこでも、誰とでも自由にコミュニケーションを取ることができる情報社会であっても、首都圏の拠点と地方圏の拠点を頻繁に往来して、業務や趣味、ボランティア活動などに打ち込むといったステレオタイプ的な多拠点居住者は、むしろ少数派であり、現実には比較的近距離に所在する拠点間を活動に応じて往来している様態が本研究から明らかとなった。
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