研究課題/領域番号 |
22K01057
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
関戸 明子 群馬大学, 共同教育学部, 教授 (50206629)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 旅行文化 / 紀行文 / 観光経験 / ツーリズム |
研究実績の概要 |
本研究は,近代日本において,どのような特色をもった旅行文化が生み出され,変化したのかを,さまざまなメディアやテクストを分析することによって明らかにし,当時の人びとの観光経験の歴史的な実態を捉えることを目的としている。4年計画の1年目にあたる本年度は「徒歩による移動が主体であった幕末から明治前期」に重点をおいて研究を進め,次の2本の論文が公刊された。 1「江戸後期から明治期の紀行文にみる妙義山登山」では,山水画を思わせる風景で知られてきた妙義山を事例地域として,平沢旭山(1780年と1782年に訪問)から大町桂月(1907年に訪問)までの紀行文6点を取り上げ,苦労して岩山を登って石門めぐりを楽しむさま,山々の絶頂からの眺めを得た経験について考察した。2「明治期の東京における温泉浴場の展開と場所の意味」では,1870年代後半から「開化」を象徴するものとして温泉浴場が流行し,1880年代には市街地に集中的な立地がみられたこと,1890年代になると浴場が淘汰された結果,郊外に立地するものが目立つようになり,繁華な市街地から離れて保養する行楽地となっていたことを明らかにした。そして東京における擬似的な温泉浴場の流行が終焉した理由として,地方にある本物の温泉地へ出かける人が増えたことが大きいと指摘した。 また,国立国会図書館において明治期の旅行記や新聞記事に関する調査を複数回にわたって実施したほか,高知県立文学館・オーテピア高知図書館でも資料を収集した。このほか,デジタル・アーカイブを用いた資料収集,購入した使用済みの絵はがきを用いて,旅先からの通信文について考察を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画段階では,現地での資料調査をもう1回予定していたが,実施できなかった。その代替措置として,デジタル・アーカイブで公開されている資料の収集を精力的に行ったため,必要とする資料の整理を進めることができた。おおむね計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は「鉄道と汽船を使った旅行が普及していく明治後期から大正期」に焦点をあてて研究を進める。旅行雑誌の読者投稿欄などを活用するほか,旅行記録の発掘に努め,現地での資料調査を実行していく。また2023年11月25-26日に行われる人文地理学会大会において研究発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた現地での資料調査が1回できなかったため,予算消化が少なくなって次年度に繰り越した。本年度は早めに現地調査を実行する予定である。
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