研究課題/領域番号 |
22K01063
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
杉山 武志 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (40647830)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 地方政治 / 都市化 / 地域再生政策 / コミュニティ経済 / 地域的差異 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「地方政治の過渡期」における地域再生政策の変化とコミュニティ経済の地域的差異について、理論的成果に基づきながら、事例の調査研究を進めて経験論的に明らかにすることである。 本年度の成果は、主に下記3点にある。1点目は、コミュニティ経済論の理論的成果を雑誌論文や図書の分担執筆として発表できたことにある。倫理的資本主義や新自由主義的統治といった諸概念を関連づけながら、倫理的配慮を中心とした経済と言われるコミュニティ経済の政治経済的文脈を考察するに至った。なかでも、地域をめぐる政治経済の問題がかねてより重視されてきた『地域経済学研究』において成果を得られたことは大きかった。 2点目は、一見すると関連していないように映るかもしれない「惑星の都市化」の問題をコミュニティ経済との関連で検討できたことにある。本研究の事例対象としている兵庫県は、多自然居住地域の面積が比較的広いにもかかわらず、大都市型とも捉えられる地方政治に移行しつつある。そうしたなか地域再生政策は、多自然居住地域の隅々にまで「都市化」を浸透させる「都市(化)の論理」へと転換する過程を経ているようにも映る。こうした「都市(化)の論理」への転換の可能性が、コミュニティ経済の担い手たちの動揺を引き起こす「メカニズム」の一つとして次第に明らかになりつつある。 3点目は、上述の「メカニズム」を考察するにあたって、地域再生政策の現状把握とコミュニティ経済の担い手へのインタビュー調査を当初計画に沿って予定通り開始できたことである。その成果の一部は、2023年日本地理学会春季学術大会にて速報的に学会報告を行った。なお、地域再生政策の情報収集およびインタビュー調査については、2年目以降も継続する。そして、さらなる情報収集と調査の継続を通じて、本研究の目標の一つでもあるコミュニティ経済の地域的差異の問題に臨みたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)コミュニティ経済にかかる理論的考察が順調に進み、雑誌論文や図書での成果を得られたこと。 2)兵庫県における地域再生政策の把握およびコミュニティ経済の担い手たちへのインタビュー調査の実施を開始することができ、その一部を速報的に学会報告できたこと。 以上の理由により「おおむね順調に進展している」と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、兵庫県の新たな地域再生政策を把握・整理するとともに、コミュニティ経済の担い手へのインタビュー調査をさらに蓄積する。一方で、1年目の研究成果も踏まえるならば、「地方政治の過渡期」に起因して地域再生政策が「都市(化)の論理」に取り込まれてしまい、コミュニティ経済の内実が変容して地域的差異が生じてしまう可能性があるように考察しはじめている。こうした流れを緩やかなものへと緩衝させる役割をコミュニティ経済における倫理の問題に求めたいと考えている。ただ、こうした考察には課題も残されているため、理論と実証の両面からさらなる研究の進展を目指したい。
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