研究課題/領域番号 |
22K01066
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐々木 孝子 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, その他(招聘研究員) (30777462)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 台湾 / 社区営造 / 個人ネットワーク / 社区発展協会 / コミュニティ運営 / 地域住民組織 |
研究実績の概要 |
初年度にできなかったフィールド調査を2023年3月より開始した。まず、屏東県林邊郷仁和村の社区発展協会にて同協会の活動の経緯を調査し、次に林邊郷全村(8村、調査済の仁和村と永楽村を除く)の村長に社区営造活動及び社区発展協会との協働についてヒアリングを行った。その結果、全ての村で高齢者福祉事業を行う中、仁和村では活動の種類が多く、リピーターを確保するほか、会員数も増加していた。それらの資金は、政府や民間の補助金を組み合わせることで賄い、活動の継続性が保たれていた。こうした活動は他村の高齢者の参加も得ており、林邊郷では自村と仁和村とが期せずして高齢住民に巾広い活動参加の場を提供する形となっていた。このようなゆるいつながりは、連合会等で自治会の統合を志向する日本の地域づくりにも参考になるものである。これらの結果は、コミュニティ運営の在り方という視点で農村計画学会で、ジェンダーの視点でヨーロッパ台湾学会で発表した。その後、ネットワークという視点で農村計画学会でも発表した(招待講演)。 他方、仁和村の社区発展協会にて会員を対象としたアンケート調査を実施した。協会内でボランティアとして活動参加者のサポートをするグループには、社区発展協会つながりによる個人ネットワークが醸成されていることがわかった。これは、前回の科研費研究の結果を支持するものである。一方、寺廟を管理する住民組織でのヒアリングからは、信徒間に宗教つながりのネットワークはないことがわかった。この結果は、社区営造が目指す「住民の地域に対する関心と共同意識の形成」がなされていることを示すものであり、台湾社会の民主化後の変化を示す一つの指標となりうるという仮説が成り立ちつつあると考える。 なお、代替として進めていた大学の地域連携に関する研究は、論文として出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度にCOVID-19に対する台湾政府の入境制限によりフィールド調査が全くできなかったことが本研究に大きく影響している。しかし、本年度は精力的にフィールド調査を行ったため、進度の遅れは是正された。
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今後の研究の推進方策 |
まず、これまでの結果に関して、日本台湾学会(2024年5月)にて補助金事業としての社区営造という視点から発表を行う。次に、台湾で実施されるUniveristy Social Responsibilityに関するシンポジウム(5月及び6月)では、大学の地域連携に関して日台比較の視点から発表を行う(招待あり、いずれも確定)。 フィールド調査に関しては、8月に仁和村の社区営造活動の参与観察を続けるほか、高齢者福祉活動の参加対象者を主な対象として聞き取り調査を行い、社区発展協会会員と一般住民の個人ネットワークの相違に関するデータを増やしていく。
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