研究課題/領域番号 |
22K01068
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
杉浦 真一郎 名城大学, 都市情報学部, 教授 (50324059)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 地域包括支援センター / 地域包括ケアシステム / 介護保険 / 地方行財政 |
研究実績の概要 |
地域包括支援センターの整備について把握するため,都道府県ウェブサイトからの情報ならびにいくつかの自治体での聞き取り調査等を行った。2006年度から制度化された地域包括支援センターは,おおむね中学校区を念頭においた日常生活圏域ごとに国が示す高齢者人口に応じた3専門職(保健師,社会福祉士,主任ケアマネ)の配置を旨として整備していくこととなっており,高齢者人口が一定数以上の規模で,かつ増加傾向にある地域ほど,その体制整備を増強していく必要性が高い。その際,拠点数を変えずに1つの地域包括支援センターにおける職員配置数を,委託先事業者(社会福祉法人や医療法人等)に対する人件費部分での委託料の増額によって拡充する方法と,圏域を分割再編して地域包括支援センターの数を増やす方法とがある。本研究における調査では,政令市など人口規模が非常に大きな都市部では拠点数を増やすこと以上に配置人員数を増強する方向での対応が目立っている。この背景には,人口規模の大きな都市では,すでに2006年度当初から地域包括支援センターを委託可能な事業者が域内に多く立地しており,政令市などでは市内の全ての法人に委託するまでもなく所定の整備が可能であったため,早い段階で拠点数や圏域の区割りを含めた体制が確立されていた点が指摘できる。これに対して,大都市圏郊外等の人口10万未満程度以上の地域では,高齢者人口の増加に対応するため,圏域再編を伴う新規委託先の獲得による地域包括支援センターの新たな整備を試みる事例が見られる。これら中小規模の自治体では,市直営だった場合を中心に,当初は委託可能な事業者が少なく,相談件数が増加する中で,直営による専門職確保が困難になってきた状況を受けて,地域の事業者への委託に切り替えるケースが見られる。ただし,その際の委託先事業者の確保には,受託辞退など一定の困難さが伴う状況も確認される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度においては,大都市圏のいくつかの県および高齢者人口の伸びが今後も見込まれる県を中心として,地域包括支援センターのこれまでの整備状況について聞き取り調査ならびに過去の整備過程を把握しうる資料等の提供依頼を行った。現地調査では,静岡県,沖縄県,兵庫県,大阪府,奈良県の地域包括ケアシステム担当部署を訪問し,各府県内市町村との情報共有の方法や直近の整備状況ならびに課題について聞き取りを行い,国(厚生労働省)による統一的な年次調査とは別に各県による情報照会をしている実態等を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画として当初から示している主な課題について着実に取り組み,その内容を推進していくことを基本的な方向性として考えている。まずは前年度に調査できていない都道府県におけるこれまでの整備状況の過程を把握することを目指すが,とくに首都圏や三大都市圏のほか,政令市を抱える県を中心に,地域包括支援センターの整備がどのように進んできたのかを明らかにしていく。その際は,初年度の研究で一定程度まで明らかになった傾向,すなわち政令市等の人口規模の大きな都市部ほど当初からの体制整備が確立されているため,より最近での新規整備が少なく,体制の増強が拠点数の増加よりも1センターごとの人員配置数の拡充という方法によって対応している面が目立っており,逆に人口規模がさほど大きくない自治体では圏域の分割再編によって直営から委託への移行が近年になって進んでいることについて,どの程度まで一般的な傾向として評価できるのかを検討していく。これらの検討を進めていく中で,後者すなわち圏域再編と新規委託による体制整備の拡充を進めてきた自治体に注目し,地域包括ケアシステムの再構築が順調に進んでいると考えられる事例地域を見出し,現地調査によって関係機関への聞き取りを行いつつ,その要因について考察を進めていくことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度も年度半ばまでは,コロナ禍のため勤務先大学における出張の制限措置が解除されておらず,とくに調査出張を計画的に実施可能な時間的な余裕のある夏季休業中を含めてその機会を得ることが難しかったことが,予算上大きな割合を占める旅費の執行を困難にさせた。そうした結果,年度内での使用が予定通りとならず,次年度使用額が生じることとなったと考えている。 令和5年度においては,前年度分における次年度使用額を念頭に,夏季を含めて年度前半から調査出張等による研究活動を遂行し,順調かつ適切に使用していくことを計画している。
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