研究実績の概要 |
本研究は、複数の空間を交差する移住者の実践、とりわけ在日ロシア語圏移住者における居住経路や場所づくり、商業などを調査し、多様な空間を組み込み、移住者の生活を多時空的に捉えるフレームワークの発展を目的としているものである。2022年度に行った調査について、参与観察を主な方法として、神奈川県や山梨県、長野県などにおける、在日ロシア語圏移住者による「ダーチャ」(別荘)の活用やそれを巡るコミュニティ実践を記録し、移住者によるプレイスメイキングについてのデータを得た。それ以外にも兵庫県X市を訪ずれ、家屋の活用とも結びつく日露家庭によるアート活動や地域の活性化・多文化化についてのデータを取得できた。 また、2022年11月には白山人類学研究会で、在日ロシア語圏移住者に特化した日本での初めてのシンポジウム("Junctures, Ruptures, and Reframings: Exploring Community-building, Integration, and Transnational (Dis)connectivity of the Russian-speaking Migrants in Japan")を開催し、在日ロシア語圏移住者を対象として長年調査をしてきた4人の研究者(ゴロウィナを含む)の発表の場を設けた。本シンポジウムで発表された論文は、特集号として、『白山人類学』26号(2023年3月・査読つき)で刊行された。本シンポジウムでは「在日ロシア語圏移住者を研究する在日ロシア語圏移住者」というネットワークを発足し、現在は同じメンバーでの新たな企画を進めている。 さらに、データ分析や民族誌のビジュアル化について、研究支援者と作業を進め、分析結果を利用した1本の論文は現在国際誌において査読を受けており、2本はそれぞれ"Home/Making"(コンコルディア大学)および第50回日本生活学会研究発表大会で発表の予定(採択済み)である。
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