研究課題/領域番号 |
22K01088
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
久保田 裕道 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 無形文化遺産部, 室長 (00724593)
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研究分担者 |
本林 靖久 大谷大学, 真宗総合研究所, 研究員 (30626833)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ブータン / 祭礼芸能 / 文化変容 / 無形文化遺産保護 |
研究実績の概要 |
ブータン王国タシガン県メラ村には、家畜のヤクをモチーフとした「ヤクチャム」など、希少な祭礼芸能が伝承されている。この祭礼芸能がいま、継承の危機にある。2010年には外国人の入境が許され、その後の自動車道路の開通や村長の交代によって激変した社会的環境は、コロナ禍の影響もあわせて、祭礼芸能の変容を加速させている。本研究では、それらの実態と、基盤となる信仰の実態を記録・分析するとともに、変容実態の記録と検証を行っている。 令和4年度に調査を予定していた時期には、コロナ禍によってブータン側が渡航者受け入れを行わなかったため、現地調査は行なうことができなかった。そのため、リモートによる調査に切り替え、基本的に週に2時間程度のヒアリングを行って情報を収集した。 こうして得られた情報をもとに、メラ村における祭礼実態の分析を実施。さらに同様の問題は、ブータン各地の祭礼芸能でも起きており、メラ村での調査を中心に据えつつも、ブータン各地での過去の調査データも踏まえ、ブータンにおける文化変容実態の全体像を検証する資料を作成しつつある。今後は、そのようにして得られた検証結果から、祭礼芸能の保護に貢献できる方法論を考察する。考察時には日本における保護事例とも比較を行い、日本・ブータンに共通する課題をも明らかにしつつ、最終的な提言を行う。 具体的には、危機的状況にあるブータンの祭礼芸能の変容実態と、その要因となる社会的環境の変化とを民俗学の手法を用いて調査・分析を行い、画像・映像を併用した報告書を作成する。方法としては、現状を①形態的変容、②意味的変容、③縮小・休止・廃絶等に分類し、その要因を(a)伝承的必然性(b)社会的要因(c)精神的要因(d)活用的要因等に当てはめて分析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定では、令和4年の夏に調査地メラ村で行われる祭礼を調査する予定であった。しかし令和4年度は、相手国ブータンにおいて新型コロナウイルス感染症の流行が収束しておらず、9月まで渡航者の受け入れが認められなかった。したがって、予定していた祭礼を調査することが叶わず、やむを得ず渡航を断念した。 代わりにメラ村出身で首都ティンプー在住のプブ・ツェリン氏と、リモートによるヒアリング調査を基本的に週1回2時間程度行い、メラ村の祭礼を中心とした民俗について情報収集をしながらまとめている。さらにメラ村出身者が書いた英語・ゾンカ語で記したメラ村の民俗について、あるいは過去に撮影されたメラ村関係の映像資料を見ながらのヒアリングも行い、各々を詳細に分析することを行った。 こうした調査によって、渡航以前に調査対象地の基礎的な情報を把握することができ、予定より遅れは生じているものの、調査途中で行う予定の作業を先んじて行うことができた分、今後の調査と分析については加速することが可能となった。 ただ令和4年より相手国ブータンがすべての滞在者に、1日200ドルの観光税を強いることになった。それまでは実質1日65ドルであったため、当所の予定よりも大幅なコストアップとなっており、今後の調査行程を短縮せざるを得なくなることが危惧される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず令和5年8月にメラ村最大の祭礼である8月の「ワン」(断食法要)に赴き、「ヤクチャム」と呼ばれるヤクの舞踊を中心とした調査、及びヤクチャムの信仰的基盤となっている女神アマジョモについての信仰形態の在り方についての調査を行う。調査地メラ村では、調査に際してはメラ村出身の協力者であるプブ・ツェリン氏の全面的な協力を得て、村長、村内の各伝承者、僧侶らからの聞き取り調査、用具等調査を行う。 令和6年6月には、もう一つの中心的祭礼である「チューコル」(経典行列)を訪れ、アルファと呼ばれる芸能を中心に調査を行う。 こうした祭礼は、コロナ禍や政治体制の変容等を踏まえて、現在変容の過渡期におり、そうした実態と文化財保護的観点から見た現状分析を行う。特に現地での信仰実態や他地域における祭礼芸能の変容との関りについても、分析を進める。 また調査で得られた映像等記録んびついては、過去の記録とあわせてアーカイブ化を進め、研究蓄積とする。研究成果については報告書を作成し、メラ村の関係者及び日本・ブータン双方の研究者・文化財行政関係者との情報共有を図る。映像・画像も含め、インターネットによる公開も行うものとする。3年目には、こうした公開に向けたコンテンツ作りをも行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度の調査予定期間に、調査相手国であるブータンが、新型コロナウイルスの感染対策として外国人渡航者の受け入れをしなかったため、当該調査を行うことができなかった。それゆえ令和4年度に予定していた調査を、リモート調査に切り替えざるを得ず、渡航費用を使用しなかったことによって次年度使用額が生じた。 令和5年度には、4・5年度分の助成金をあわせた額を調査費用として使用する予定である。特に令和4年度にブータンが渡航者すべてに課す観光税が大幅に値上がりしたため、当初の予定よりも調査費用が増えることとなり、それも踏まえての計画とする。
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