研究課題/領域番号 |
22K01103
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
嘉原 優子 中部大学, 人文学部, 教授 (70333169)
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研究分担者 |
柳谷 啓子 中部大学, 人文学部, 教授 (00220195)
山本 裕子 愛知淑徳大学, 交流文化学部, 教授 (20410657)
大谷 かがり 中部大学, 看護実習センター, 助教 (60535805)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 超高齢化社会 / 異文化介護 / インドネシア人 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、異文化間老年介護において生じる社会的・文化的問題を、文化人類学、医療人類学、宗教学、社会学、日本語教育学といった学際的観点から明らかに、その解決策を検討するものである。2022年度は、愛知県内の協力医療法人の協力のもと、研究を実施した。同医療法人の看護責任者、インドネシアに関する責任者との研究会では、実際の事例をもとに意見交換を行なった。また、介護職に従事するため2022年に来日したインドネシア人9名の来日後介護研修を見学、記録するとともに、研修担当者から研修上留意している点、問題点等について聞き取りを行った。来日したインドネシア人介護職員のうち、4名のインドネシア人介護職員に対して、リハビリテーション病院での勤務に関する実態、来日後の暮らしにおける問題点についてインタビュー調査を実施した。併せて「老人観・身体観・衛生観」に関するアンケート調査、「日本語学習歴」に関するアンケート調査も行った。当初、困難が予想されていた宗教的価値観による差異から生じる問題は、比較的スムーズに克服されていることがわかった。彼らは、病院において基本的な環境整備を担うことが多く、目標は一人で全てをカバーできるようになることだという。通常は、日本人スタッフと共に行動し、職務上の問題は都度、当日の担当スタッフに確認するとのことだ。同病院責任者、同医療法人インドネシア担当者とも意見交換を行い、双方で貴重な発見があった。たとえば、通常、日本人職員が負担に感じることの多い入浴補助を、インドネシア介護職員たちは好きな仕事として挙げた。その理由については、なすべきことが明確で悩むこと、迷うことがないからだという。 また、中部大学、愛知淑徳大学において、約400人の学生を対象に、「大学生の老人観・身体観・衛生観」に関する意識調査をアンケート形式で実施した。現在はその入力、集計中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事前に、2022年度はコロナの影響下からは完全には抜け出していないであろうと想定していたため、国内での調査活動を予定しており、その範囲内で、おおむね順調に進展している。メンバーとのミーティングもリモートで実施することが多く、ご協力いただいている医療法人関係者とも対面だけでなく、リモートも活用している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、引き続き日本の病院で介護職に従事するインドネシア人の仕事、及び暮らしに関するの諸問題について、インタビュー調査を実施する。彼らが勤務する医療法人から病院外で個別に実施する許可を受けたため、勤務から離れた、より素に近い顔を見せてくれることを期待している。また、彼らが「担当さん」と呼んで日常的に指導やアドバイスを受ける日本人職員への聞き取り調査も予定している。そうすることで、指導する側と指導される側との間の意識のズレや当事者が気づかない論点を発見できると考えている。現在、病院内における部外者の立ち入り調査はなお困難な状況ではあるが、状況が改善されれば実際にインドネシア人介護職員が仕事に従事する様子を参与観察する予定である。 引き続き協力医療法人との連絡を密にし、「老人観・身体観・衛生観」に関するアンケート調査の結果等をもとに、日本、インドネシアの若年層における老年介護をめぐる意識の差異について、検討、意見交換を行う。 8月か9月にはインドネシアの送り出し機関における来日前研修を見学し、現地機関や研修に当たる指導者への聞き取り調査を実施する予定で、現在、ジャカルタの送り出し機関と日程、調査内容を調整中である。現在、日本ーインドネシア間の航空券価格が高騰しており、メンバー4名全員での現地調査が困難なため、2名もしくは3名で実施する予定である。 来日前研修と来日後研修それぞれにおけるカリキュラムを調べ、問題点を明らかにし、改善方法を検討する。また、インドネシアの若年層を対象に「老人観、身体観、衛生観」に関するアンケートを実施し、日本において2023年度に実施したアンケート調査結果と比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
打ち合わせ等のほとんどをZOOM等を用いたリモート会議で実施したため、旅費を抑えることができた。また、国内調査のための出張では自家用車を用いたが、研究分担者と同乗するなどしたため、旅費の使用が抑えられた。また、2023年度に配分される補助金では、インドネシア調査にかかる費用が賄えないため、2022年度の補助金の一部を2023年度に回して補填することとした。
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