研究課題/領域番号 |
22K01116
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
吉良 貴之 愛知大学, 法学部, 准教授 (50710919)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 法哲学 / 行政国家 / シェブロン法理 / サンスティーン / ヴァーミュール / ナッジ |
研究実績の概要 |
2年目にあたる2023年度は、行政国家状況における規制行政のあり方、およびその立憲的統制のあり方について中心的に研究を進めた。まず、本研究の着想の直接のきっかけとなった、エイドリアン・ヴァーミュール、キャス・サンスティーンの共著書『法とリヴァイアサン』(勁草書房、2024年2月)を翻訳出版し、本研究のテーマを議論するための基盤構築の作業を行った。本書で議論の対象なっているシェブロン法理については、アメリカ合衆国最高裁で見直しが進んでいるとされるが(2024年6月に何らかの判断が出る見込み)、本書と本研究に関連する論考は、日本国内での議論でも参照されうる。 ほか、アメリカ合衆国最高裁の判例をもとに、法と時間の関係を問う論考「裁判と時間」(『現代思想』51巻9号)や、法における専門知のダイナミズムについて論じた「法における知と無知の配置」(『現代思想』51巻7号)を公表し、本研究を広く「法」理論として位置づけるための作業に一定の足場を作った。行政法哲学の基盤構築という点では、「多様性のデザインは可能か?」『法哲学年報2022』(2023年10月)で、社会科学全般との接合可能性を問題化した(ほか、いくつかの書評でその予備的な作業を行った)。 新型コロナウイルス感染拡大状況が沈静化してきたことから、外国での調査、意見交換もある程度は可能になった。一例として、法哲学者ジョセフ・ラズの追悼シンポジウム(2023年10月、ロンドン)に参加し、参加者と意見交換を行うことで、英語圏の一般法理学の最先端の議論状況に触れ、本研究を世界的な文脈に乗せるための構想作りと、人的ネットワーク構築の必要性を改めて確認した(その必要から、2024年度からは研究分担者を追加し、より多角的な考察を目指すこととした)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示したように、複数の論考の発表と、中心的な書物の翻訳出版を行うことができ、行政国家状況における権力配置のあり方と、その法的統制について多角的に考察することができたと考えている。また、海外での調査や意見交換なども積極的に行えるようになったことから、本研究の問題関心を国際的に共有し、発信していくための準備も十分に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究方法は3年目もこれまでと同様、特に英語圏の議論の積極的な摂取と、それに基づく理論構築、論文執筆という作業が中心となる。特に、英語による国際発信が必要であり、その準備を整えてきたことから、3年目は積極的に国際ジャーナルに投稿することとしたい。 また、問題関心の明確化と、その広がりを改めて認識する機会を得たことから、2024年度からは研究体制を見直し、本研究の法理論的含意を追究する一般法理学的研究と、政治哲学的含意(とりわけ世代間正義、歴史的不正義)を追究する研究のために、2名の研究分担者を追加し、さらに多角的に本研究のテーマを考察していくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年目にあたる2023年度は、国内・国外の研究調査、必要な物品(主に書籍)の調達をほぼ予定通り行った。次年度使用額が生じたのは主に、1年目に所属機関の異動や新型コロナウイルス感染拡大による海外渡航の制限などのために支出が少なかったため。
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