研究課題/領域番号 |
22K01148
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
上田 健介 上智大学, 法学部, 教授 (60341046)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | イギリス法 / アカウンタビリティ / 司法権 / 原告適格 / 司法判断適合性 / 憲法原理 |
研究実績の概要 |
本研究は、具体的事件・争訟性を訴訟提起の要件とする日本国憲法の司法権のもとで、執政府(内閣)の行為・不作為の合憲性・適法性について裁判所に問う訴訟を提起する可能性はないのか、という問題意識のもと、日本法では執政府(内閣)に適切なアカウンタビリティを果たさせることができる訴訟を考えた際にその妨げとなっている諸事項、すなわち、第一に原告適格、第二に司法判断適合性(日本でいう統治行為論ないし政治問題の法理に相当)、第三に、これに関連して、法的判断を可能とする規準とそれを根拠づける憲法原理について、イギリス法ではどのように考えられている結果、訴訟の提起が可能となっているのかを明らかにしようとするものである。 今年度は、この論点にも関連する近年のイギリス公法の重要判決であるミラー第2判決について検討し直すとともに、司法判断適合性が問題となった事案について、基礎的な検討を行った。ド・スミスによれば、「裁判所の憲法上の役割に内在する限界」と「裁判所の制度的な能力に内在する限界」に分類されるが、両者は重なるところもあるように思われ、理論的な考察とともに具体的な判例の検討を本格的に行っていきたいと考えている。なお、現地調査は、COVID-19の関係もあり、今年度は実施できなかった。 このほか、基礎的な研究として、イギリス法で原告適格が緩やかに捉えられている歴史的事情として、かつてExchequerが裁判所としての役割も果たしており、そこで課税の適法性とともに歳出面に関わる行政活動の適法性についても審査を行うことがあったのではないかとの教示を得た。もうひとつ、アカウンタビリティの概念について、しばしば参照されるMark Bovensの整理を検討するとともに、アカウンタビリティを実現する制度について、主に議会と政府との間の関係ではあるが、英独日の制度比較を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎的な調査は進められている。初年度にも予定していた現地調査はCOVID-19の関係もあり実施できなかったが、基金ということもあり、次年度に繰り下げて、より充実したかたちで実施できればと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
司法判断適合性の論点を中心に、「裁判所の憲法上の役割に内在する限界」と「裁判所の制度的な能力に内在する限界」という両者について、理論的な考察とともに具体的な判例の検討を本格的に行っていきたいと考えている。 また、おそらく司法判断適合性の問題に密接にかかわる現在進行形の問題として、ミラー第2判決を起因とする(そしてより広くは1998年人権法に基づく裁判所による人権条約適合性に関する審査を背景とする)裁判所改革の動きについても、フォローができればと考えている。 さらに、余力があれば、原告適格の論点にも通ずる、イギリスにおいて対行政府、執政府の案件を扱う裁判所の歴史についても検討を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、初年度に予定していた海外調査がCOVID-19の余波もあり実施できなかったことが大きい。海外調査は次年度にずらして実施する予定である。
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