研究課題/領域番号 |
22K01154
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 匡彦 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (80251437)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 行政法学 / 行政組織法 / 社会保障法 / 公的年金法 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の国民年金制度、厚生年金保険制度の下で保険料により形成されているいわゆる年金積立金を運用する任務を負っている年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)の組織構造、GPIFと国との関係を、公的年金制度のロジックも踏まえつつ公法学の観点から分析し、その特色を明らかにすることを目標とするものである。 2022年6月末にドイツ・ハイデルベルクで予定されていた日独行政法コロキウムにおいて、GPIFに関する行政組織法から見た問題の所在・関連とを報告し、研究のスタートとするつもりでいたが、新型コロナウイルス感染症の流行が続いていることから、同コロキウムが2023年4月末に延期となったため、延期されたコロキウムでの報告を準備するという形で研究を行った。 報告においては、GPIFに関して設定されるべき問題をまず同定するという観点から、組織構造の特色、とりわけ経営委員会という合議制機関の存在が持つ意味、GPIFによる積立金運用方法の特色、とりわけGPIFに許されている運用方法が法定されていることの意味に着目して報告することとしている。 同時に、この概括的研究を進める中で、GPIFの組織構造の内、合議制機関である経営員会の機能、同委員会と理事長、管理運用理事との関係をさらに詰めて研究する必要、積立金運用のあり方に関するGPIFの特色を他の運用機関と比較しながら浮き彫りにする必要が確認されたので、その研究の準備も進めた。とりわけ後者については、GPIFに許されている運用方法が法定されていることの意味、許された運用方法の持つ具体的意味、実際の運用のあり方の特色に関する研究の必要性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に予定していた報告は行えなかったものの、その機会が失われたわけではなく、延期された報告の準備という形で研究は行われ、1年目の予定時期に報告を行ったと仮定した際の研究よりも進んだ形で、問題を把握できていると考えられる。二年目も、研究の一部をまとめる予定があり、概ね順調に進展しているといって良かろう。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、GPIF内部の組織構造が持つ意味を検討するとともに、国との関係に関わる研究を続行する。その際には、GPIF内部に存在する合議制機関(経営委員会、監査委員会)の持つ意味、監督する大臣の側に存在する合議制機関(社会保障審議会)の持つ意味に注意を払うことになろう。加えて、行政組織法の観点からのこれらの研究に並行して、GPIFに許されている運用方法が法定されていることの意味、許された運用方法の持つ具体的意味、実際の運用のあり方の特色に関する研究も進める。こちらは、行政組織法的観点そのものではないかもしれないが、GPIFを行政組織法の観点から考えるために、同時に把握しておかなくてはならない、そうでないとGPIFが何故そのような組織構造になっているのかも十分に把握できないというのが、1年目の研究から得た知見でもあった。運用方法の研究は、今回の研究後、次のテーマとして考えていたが、予備作業の形であれ、並行して進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツへの出張を2022年度は控えたため、旅費の使用が少額にとどまった。2023年度は、ドイツへの出張を計画している。
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