研究課題/領域番号 |
22K01155
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 知更 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (30292816)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 憲法 |
研究実績の概要 |
2022年度に行った研究は、以下の3点にまとめられる。第一に、初年度として研究全体の考察の枠組みを練り上げることに力を注いだ。とりわけ、「憲法(ないし法一般)」と「政治」の関係をどう捉えるべきかに関して考察を進め、当面の自分なりの考え方を2本の論文で展開した。「議院内閣制における議会の「審議」と「決定」」(公法研究 83 号)では、可能な範囲で問題の構図の整理を試み、また「自律と対抗権力」(只野他編『統治機構と対抗権力』収録)では、ケルゼンの民主主義論を出発点としながら、法の自律性を出発点に法学が政治を捉えようとする試みの意義と限界について考察を行った。第二に、「憲法」と「政治」の関係は、憲法と社会的諸領域の関係という一般的主題の特殊な一類型とも見うるところ、この一般的主題について以前からの自分の研究を継続した。論究ジュリスト38号の論文「準拠点としての「近代」」及び座談会「憲法学と「社会」」をとりまとめる上での最終段階の作業は、本研究とも重複する。また、「憲法原理としての地方自治」(『講座・立憲主義と憲法学第4巻』)もこうした問題意識が基礎に置かれており、本研究とも深層で関係する。第三に、本研究は比較憲法の方法にも関係しているが、この点に関してもいくらか検討を進めることができ、ベルリン近郊で開かれた国際集会「日独憲法対話」で「Struktur des Verfassungsvergleichs: Ein Kommentar aus japanischer Perspektive」として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の基礎的な部分に関して、順調に検討を進めることができている。また、本研究の直接の主題である議会政とは異なるテーマの研究・執筆を行う際も、本研究との関連性を意識し、相乗効果が生じる形で作業を進めることができており、全体として着実に当初の問題意識が深化しまた明確化しつつあると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は順調に研究が走り出しているため、今後も当初の予定通り研究を進めていきたいと考えている。この際、徐々に、方法論的・基礎的部分の検討から、議会政に関わる具体的な論点へと比重を移していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は研究初年度中に海外の研究者から助言を得るために海外出張を行うことを考えていたが、コロナ禍による制約が解消されず、その他諸事情を勘案して取りやめた。このため、一方では書籍購入に多く費用を充てつつ、他方で次年度以降に海外出張する場合のために資金を一部残すことにした。2023年度に海外出張に出る場合には、そのための費用として用いる予定であるが、もし2023年度も諸事情を勘案して見送る場合には、更に翌年度以降に(当初想定していた研究の立ち上げ段階ではなく、研究がある程度まで進展したことを前提に、研究のとりまとめ段階で海外の研究者との意見交換を行う機会に備えて)繰り越す可能性もある。
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