本研究は、日米における裁判所による不平等の救済方法について包括的な整理・考察をすることで実務での参考になるような理論的体系を構築することを目的としている。 本年度は、まず、日本における同性婚訴訟に関する研究を行った。昨年度から新たに名古屋・福岡・東京の各地裁判決と札幌高裁判決が出され、これらの裁判例についての分析を行った(この研究成果の一部は、判例解説において公表した)。また、2024年2月に申立てが行われた同性婚を求める仙台家事審判事件において、オブザーバーとして弁護団会議に参加しながら、同性間の婚姻を認めないことの憲法適合性の問題や、違憲と判断された場合に婚姻届受理の救済を認める法律構成について検討した。このオブザーバーとしての参加は次年度も引き続き継続する予定であり、実務的な観点も取り入れた研究を進めていきたい。 アメリカにおける不平等の救済に関する研究としては、平等保護やアファーマティヴ・アクションに関する判例の研究を行った。また、アメリカ法で初めて同性カップルの婚姻を認めたマサチューセッツ州の判例を分析した。ここでは、違憲の救済方法として婚姻類似の制度を創設することでも足りるか否かが問題となっており、日本の同性婚訴訟についての示唆も得ることができた(この成果は、「同性婚訴訟と婚姻類似の制度」法学87巻4号156頁によって公表した)。これらの研究は次年度も引き続き行っていく予定であり、その研究成果も踏まえて公表することを予定している。
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