研究課題/領域番号 |
22K01163
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研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
青木 洋英 沖縄国際大学, 法学部, 講師 (20908090)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 動物法 / 動物の権利 / 動物福祉 / 政治哲学 / 憲法 / 動物倫理 / 信教の自由 / 基本的人権 |
研究実績の概要 |
2023年度には、論文1点の刊行及び研究報告1件を中心に、次年度以降の研究活動のための資料収集を行った。 論文としては、2022年度に第83回宗教法学会にて報告した内容(「信仰としての動物保護と信教の自由」)を論文化し、宗教法学会の学会誌である『宗教法』にて発表した(2023年11月)。アメリカにおける信教の自由を理由として解剖実習受講拒否に関する事例を検討したものだが、論文化するなかで、動物法の興隆の背景にある「動物倫理学」の展開を、社会制度において実現すべき正義論の文脈で理解するべきか、個人の倫理的選択や信念の文脈で理解すべきかといった課題があることが明らかになった。 こうした課題は、2023年11月18日に行った憲法理論研究会での研究報告の内容に引き繋がれることとなった。研究報告では、現代正義論の旗手の一人であるMartha C. Nussbaumが最新の著作(Justice for Animals: Our Collective Responsibility, Simon and Schuster, 2023)において展開する議論を整理し、これを日本の憲法学がどう考えるべきかを検討した。Nussbaumの議論をそのまま取り入れることは困難であるが、その発想方法や前提には日本の憲法学の従来の方向性と共通する点も多く見出すことができる。動物倫理を個人的な信念の問題とする視点を批判し、明確に正義論の文脈で自説を展開するNussbaumの議論を追うことで、憲法学から見た場合のその意義と課題が明らかとなったと言うことができる。なお、研究報告の成果は2024年度にて憲法理論研究会編の叢書にて論文化される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文1点の発表と、次年度での論文刊行に向けた研究報告を行うことができた。また、次年度の前半には、研究報告2件(国内1件、国外1件)を予定しており、そのための資料収集も順次行っている。2022年、2023年ともに、ニューヨーク州の最上級審やアメリカ連邦最高裁判所において本研究課題にとって重要な判決が公表されたこともあり、必ずしも当初の計画通りの研究内容となっているわけではないが、これらの新たな判決の検討も含めて、研究自体は概ね順調に進展しているということができる(2022年の判決については、2022年度にて既に研究成果を公表している。また、2023年の判決についても、検討が進んでいる状況であり、2024年度にて研究成果を公表することができる予定である)。
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今後の研究の推進方策 |
2024年4月には国内の研究会にて、カリフォルニア州の動物福祉に関する州法の憲法適合性が問われたNational Pork Producers Council v. Ross, 598 U.S. 356 (2023)の検討の成果を報告し、年度内にはその成果を論文として発表する予定である。また、2024年度5月末には、英米圏の動物法に関する研究者や実務家の集まるThe 4th Annual UK Animal Law Conference (Birmingham City University, May 29 and 30, 2024)にて、研究課題と関連した研究報告を行う予定である。 また、新型コロナウイルスの影響もあり2022年度、2023年度ともに国外での十分な資料収集を行えなかったため、2024年度後半には国外出張を企画し、現地での文献調査を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度後半には資料収集を目的とした国外出張を計画していたが、計画後に、2024年度にて国外研究発表の機会を得られることとなった。そのため、当初の計画を変更し、2023年度分の出張費を用いて、2024年度の前半に研究発表を行うこととした。これによって次年度への繰り越しが発生している。
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