研究実績の概要 |
EU人権法の体系化を目指し、本の出版化に向けてきたが、2023年度は、文献を読むとともに、執筆をし続けてきた。それが形となったのが、『EU基本権の体系』(法律文化社 2024年)である。これは、これまで権限を中心に研究してきたが、権限の行使が基本権に密接に関係していることを認識し、これまでの研究成果を活かしつつ、人権・基本権という観点からまとめたものである。本書は、約360頁、12の章から構成される。 また、複数の英語論文が公表された。主なものとして、EU運営条約267条に規定される、先決付託が、EU司法裁判所だけではなく、ドイツ連邦憲法裁判所や欧州人権裁判所によっても義務づけられていることを示した、"Parallel Obligations to Seek Preliminary Rulings from the Court of Justice of the European Union in the European Legal Space", Zur Verwirklichung eines Vereinten Europas, Festschrift fuer Rudolf Streinz zum 70. Geburtstag, 2023, C.H.Beckが出版された。国際法学会での英語報告を基礎にして執筆した、“The Development of, and Issues Associated with, EU Legal Spaces”が、Japanese Yearbook of International Law, Volume 66, 2023において公表された。また、EU司法裁判所において1960年代に確立されたPlaumann事件に基づく判例法のために、私人の原告適格が認められないことに鑑み、この判例法を克服する方法を探った論文、”Possibility of Extending Legal Standing under Article 263 (4) TFEU in the Matter of Climate Litigation”が Hitotsubashi University of Law and Politics, vol. 52が公表された。 加えて、6本の判例研究が公表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
EU人権法の体系化したものとして、『EU基本権の体系化』(法律文化社)として、2024年3月末に刊行された。これは、これまで権限を中心に研究してきたが、権限の行使が基本権に密接に関係していることを認識し、これまでの研究成果を活かしつつ、人権・基本権という観点からまとめたものである。 概要であげた論文に加え、ビジネスと人権について日本とヨーロッパを比較し英語で執筆した論文がイタリア語に翻訳され、“LA DUE DILIGENCE D’IMPRESA IN EUROPA E IN GIAPPONE”Traduzione di Erica Lombardozzi., ANNUARIO DI DIRITTO COMPARATO E DI STUDI LEGISLATIVI, 2023に公表された。 また、EU司法裁判所の判例研究が6本公表された。「EU予算保護のためのコンディショナリティ規則と法の支配」EU法研究 13号、「女性に対する暴力及びDVの防止に関するイスタンブール条約をめぐるEUの締結権限と締結手続」自治研究 99巻5号、[EUが当事者でない国際海事機関(IMO)におけるEUの代表性と権限」国際商事法務52巻1号、「EUにおける一事不再理(ne bis in idem)原則と相互信頼」自治研究99巻7号 、「EUにおける気候訴訟と原告適格」自治研究 99巻10号、「オーフス条約九条三項及びEU基本権憲章四七条によるEU構成国における司法アクセスの保障」自治研究100巻1号が公表された。 加えて、国際シンポジウムやセミナーで英語やフランス語で報告を行った。
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