研究課題/領域番号 |
22K01177
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
種村 佑介 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80632851)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 国際私法 / 国際知的財産法 / 知的財産に関する国際私法原則 / 先端科学技術 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、知的財産の国際的保護の実現のために、日本はもちろん、韓国、中国その他の東アジア諸国からも受入れ可能な、知的財産に関する国際私法の共通原則を見出すことを目指すことにある。 2022年度は、先行研究の詳細な分析として、ILA京都ガイドラインと、とくにわが国を含む東アジア諸国で進められてきた地域的国際私法統一プロジェクト(2010年の日韓共同提案および透明化プロジェクト立法提案)とを比較することで、それぞれの外国判決の承認執行、国際裁判管轄権および準拠法選択の各セクションの異同を明らかにする研究を中心に行った。その研究成果である種村佑介「知的財産分野における実質法の統一と国際私法の統一」早稲田法学97巻3号(2022)73頁は、本研究の方向性や全体像を提示するものである。 また、韓国・仁川広域市にて開催された次世代コンテンツ財産学会の2022年度国際学術大会(Recent Development in Unfair Competition Law、大韓民国仁川広域市、2022年9月17日)に参加し、営業秘密侵害の準拠法に関する日本の近時の動向を英語で報告した(Yusuke Tanemura, “Private International Law Issues Related to Trade Secret Protection in Japan”)。この報告原稿は、会場となった仁川国立大学の紀要に掲載される予定である(日本語による研究成果として、種村佑介「営業秘密侵害の準拠法:韓国・仁川大学における研究会報告(知財法論壇 第17回)」IPジャーナル23号(2022)52頁を公表した)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、韓国次世代コンテンツ財産学会の国際学術大会にて報告の機会を得たため、不正競争法をめぐる日韓両国の議論状況について知見を深めることができた。先行して公表した本研究の全体像にかかわる研究成果(種村佑介「知的財産分野における実質法の統一と国際私法の統一」早稲田法学97巻3号(2022)73頁)に加え、不正競争のような個別の法分野の諸論点にも焦点をあてつつ研究を進めたため、本研究の方向性を改めて確認することができた。 また、知的財産権侵害の準拠法決定に当事者自治を導入するという議論の妥当性を検証するための準備作業として、種村佑介「イングランド国際不法行為法における当事者自治の原則」早稲田大学法学会編『早稲田大学法学会百周年記念論文集 第四巻 展開・先端・国際法編』(成文堂、2022年)375頁を公表した。 以上の研究活動を通じて、2022年度はより広範な知見を獲得できただけでなく、基礎理論や隣接分野に関する研究成果も判例評釈や研究論文の形で順調に公開できている。これらのことから、本研究課題はおおむね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、前年度の韓国における国際学術大会で知見を得た、2022年の韓国国際私法改正と先端科学技術との関係に焦点を当てたテーマとする国際シンポジウムを開催する予定である。比較に際しては、日韓の法制度間の差異や優劣をつけることよりも、むしろ両国に共通する国際私法原則を見出すことに主眼を置き、先端科学技術に対する韓国国際私法の対応状況を踏まえ、わが国の法の適用に関する通則法のもとで同様の取扱いが可能かどうかを議論したいと考えている。 また、以上の東アジアにおける現状認識を踏まえて、2023年度下半期から2024年度にかけて、EU国際知的財産法やアメリカ抵触法第3リステイトメントに関する近時の動向を探るための研究も進める予定である。これに関連して、海外渡航が可能な状況にあれば現地を訪問し、インタビューや文献調査などを行うことも視野に入れたい。
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