研究実績の概要 |
本研究は、「一般法制度を排除する特有の法制度がサイバー空間には存在するか」という問題意識の下、デジタル化されたデータの持つ地理的特性をめぐる空間的把握の問題――データ流通に国境は存在するかという問題――が、領域性原理を基礎とした既存の国際法のサイバー空間への適用にどのような影響を与えるのかを個別規則の検討を通じて明らかにすることで、データ利活用に向けた国際法規制のあり方に対する一つの視座を提示することを目的とするものである。
本年度の研究実績としては、英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)およびアメリカン大学が主催するサイバー国際法に関する学術会議で意見発表と意見交換を行った。また、デジタル庁主催の「国際データガバナンス検討委員会」の有識者委員を務め、他の有識者および関係官庁の担当官との意見交換を行うことで、研究成果の実務への活用の在り方を模索した。
本年度における主な研究成果の出版についは次の通り:(1)「サイバー犯罪条約――デジタル化社会の分権的領域秩序とデータの所在地消失」『法学教室』No. 520(2024年01月号)23-28頁;(2)「能動的サイバー防御の国際法枠組み―武力未満と違法性阻却による正当化の可能性―」『国際問題』No. 716(2023年12月)29-37頁;(3)"Unprivileged Belligerency in a Deterritorialized Cyber Battlefield?," in Shuichi Furuya et al. (eds.), Global Impact of the Ukraine Conflict: Perspectives from International Law (Springer, 2023), pp. 339-357等。
|