今年度は、一次医療と二次医療の連結のあり方についてイギリスの医療制度の状況を中心に検討を進めた。Health and Care Act 2022に基づき、イングランド各地では、Integrated Care Systemsが医療・社会サービスの提供システムとして機能している。Integrated Care Systemsは、System、Place、Neighbourhoodの三層から構成されており、このうちプライマリケアを担当するGP診療所は、Neighourhoodのレベルでプライマリケアネットワークを形成し、二次医療や社会サービスとの連結を図っている。その法的形態、契約方式、医療費の支払い方式等について検討を行った。 上記の作業と並行して、わが国における医療・介護提供組織の特色と変化について検討を進めた。医療機関については医療保険法、医療法による重畳的な法的規整が構造的な特色となっている。また、介護保険サービス提供組織については、行政による規制監督、サービス評価、利用者による選択が重層的に機能することで、サービスの質の確保が図られてきたが、地域密着型サービスの導入により、こうした構造に部分的な変化が見られることを示した。これらに加えて、一般社団法人の仕組みを活用した制度(地域医療連携推進法人、社会福祉連携推進法人)により、新たな局面から患者・利用者の利益の確保が図られていることを明らかにした。このほかに、診療報酬の機能と限界、介護保険における地域密着型サービスの整備手法について検討を進め、2つの論文を執筆、公表した。
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