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2022 年度 実施状況報告書

デジタル経済における消費者の自律性の意義と濫用規制基準-ドイツ法を手がかりにして

研究課題

研究課題/領域番号 22K01191
研究機関香川大学

研究代表者

柴田 潤子  香川大学, 法学部, 教授 (90294743)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードデータプラットフォーム / P2B規則
研究実績の概要

オンライン仲介サービスのビジネスユーザーに対する公正性と透明性の促進に関する規則(EU)No.2019/1150(Platform-to-Business Regulation、以下、「P2B規則」と言う。)の意義・課題を明らかにした。P2B規則は、B2Bでビジネスを行う事業者の利用規約を規制対象とし、その透明性と公正性を確保するため一連の措置を実施することを求める、世界初の規制の試みである。P2B規則の目的は、オンライン上のPFであるプロバイダーとビジネスユーザーの間の不均衡を是正し、最終消費者の利益につなげることである。ビジネスユーザーのPFへの依存性は濫用の可能性を高め、規制の必要性が主張される。規模に関係なく、P2B取引の透明性・公正性を求めることに大きな意義があり、プラットフォーム経済におけるルールを大きく転換した。他方で、規則のタイトルにある「透明性」と「公正性」という2つの目的の間で、ある意味、中途半端な立ち位置になっていることも否定できない。特に、自己優遇、データアクセス、ベストプライス条項などは、情報開示義務を課すだけでは、規制措置としては不十分であり、取引の公正性を高めることは、競争法の役割といえ、今後の課題である。
P2B規則の運用は、加盟国に委ねられおり、ドイツの運用に着目した。アマゾンマーケットプレイスにおいて、ビジネスユーザー側が、顧客のレビューに金銭的対価を支払っていた可能性があるとして、アカウントを停止されたことが、ドイツの競争法にいう支配的地位の濫用に当たるかどうかが争われた。P2B規則は、もともと支配的地位の有無を要件としていないが、サービスの制限・停止、終了の理由開示によって、競争法違反の評価を容易にするという役割を果たしているという意味で、競争法を側面から支えことができる。開示義務を課すP2B規則は競争法の前提を形成する事になる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

プラットフォーム経済において、特に力の不均衡から生じるプラットフォームとビジネスユーザー取引の問題を扱ってきた。プラットフォームの規模に関係のない取引条件の開示義務は重要である。このように取引条件を開示することを前提にして、競争法が運用・適用される基礎が形成される。このような法規制の枠組みは日本にはなく、これを補う法の運用が必要であることが明らかになってきた。
さらに、ドイツの競争法(GWB)の第10次改正が施行されており、プラットフォームに対する規制がさらに進展している。当該改正については、欧州のデジタルマーケット法と根本的かつ実質的な法目的は同一であり、規制の基本枠組みも極めて酷似している。規制対象を一定の地位内しは事前に規制対象を定義することにより、事前規制的な特徴を備えており、いずれも、市場支配的地位・市場の厳密な画定を要件とせず、相対的に市場において有力な事業者(デジタルプラットフォーム)を規制対象としていることを明らかにした。ドイツ・欧州のデジタルプラットフォーム規制についてその特性を明らかにしてきており、さらに、競争法としていかなる行為をどのように規制するかについて、日本の法規制の在り方も含め、考察する手がかりとしうる。

今後の研究の推進方策

プラットフォーム経済における、プラットフォームとそのビジネスユーザー間の取引について、濫用性としての規制理論を総括する。特に、日本では、食べログ事件など民事事件で独占禁止法違反が争点になっているケースも出てきていることに着目する。優越的地位の濫用規制は、事業者間の取引における相対的地位の不均衡を是正するルールとして極めて有効であるにも関わらず、公正取引委員会の法運用として機能しているのかどうかを検証する必要がある。
プラットフォームに対する競争法上の規制としては、ドイツ・欧州の様相から見ると、縦の取引関係のみに着目したルールだけでは不十分であるように思われる。特にドイツの改正法の内容・運用を検証し、複数の市場にまたがるような影響を持つ行為規制のあり方を提示する。
以上のようなプラットフォーム経済における規制のあり方を踏まえて、データの提供者としてコアな役割を果たす、消費者・ユーザーの経済的自律性をどのように競争法の枠組みで実現できるかを考察する。プラットフォームとの関係では、ビジネスユーザーだけでなく、消費者も劣位にあることは同じであり、消費者の特性を前提としながら、競争法と一体的に規制することは効果的であると考える。特に、消費者の経済的自律性は経済社会の根幹であると考えており、消費者保護強化の方向性を明らかにしつつある、ドイツのカルテル庁の考え方を検討していくことにより、消費者の自律性を確保するために必要な規制を考察する。

次年度使用額が生じた理由

2022年度前半、ドイツ連邦カルテル庁の定例で隔年実施されている国際会議に出席できず、東京への出張もコロナ禍のため、しばらく困難であった。2023年度は、国際学会ASCOLAガギリシャのアテネで開催される予定であり、日本のプラットフォーム規制であるプラットフォーム透明化法の内容、運用等について説明・分析し、報告する予定としており、そのための費用として使用する計画としている。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 「Google Shoppingケース 一般裁判所判決」2022

    • 著者名/発表者名
      柴田潤子
    • 雑誌名

      公正取引

      巻: 859号 ページ: 56-61

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公開日: 2023-12-25  

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