研究課題/領域番号 |
22K01200
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川出 敏裕 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (80214592)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 損害回復 / 犯罪被害者 / 和解 |
研究実績の概要 |
犯罪被害者の保護の一環として、その被害回復を図るという観点から、近年の法改正により、刑事和解制度や損害賠償命令制度が導入されるとともに、刑の執行段階においても、矯正と保護の両面において被害弁償に向けた対象者への働きかけが行われるようになった。しかし、これらはいずれも、刑事司法制度の中で加害者に被害弁償を義務付けるものではない。そのため、被害者側からは、十分な被害弁償がなされていない現状を踏まえて、更なる制度改正を求める意見があるが、そのための議論は進んでいない。本研究は、その原因が、刑罰、刑事司法の目的との関係で被害弁償がどのように位置づけられるのかについての理論的検討が不十分な点にあるのではないかという問題意識から、わが国にはない制度を持ち、上記の問題について豊富な議論の蓄積があるドイツの状況を手がかりに、刑事司法制度における損害回復について包括的な検討を行い、新たな制度の導入について提言することを目的とするものである。 研究の1年目にあたる令和4年度においては、刑事司法における損害回復に関するドイツの状況について、包括的な文献調査を行った。具体的には、刑罰及び刑事司法制度と損害回復の関係という観点から、ドイツにおいてこの問題が議論されるようになった1980年代以降の学術論文と、関係する法改正が行われた際の立法資料を検討した。これにより、ドイツにおいては、犯罪被害者の保護という観点にとどまらず、刑罰,さらには刑事司法制度の目的に遡った議論がなされてきたことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は文献調査が主であり、これについては、文献の収集、分析ともに、ほぼ計画どおりに進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本年度に引き続いて、ドイツの状況に関する文献調査を行ったうえで、いったん中間まとめを行い、可能であれば、ドイツの現地調査を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注した外国語の書籍が年度内に納入されなかったため。
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