研究課題/領域番号 |
22K01202
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
島 亜紀 朝日大学, 法学部, 准教授 (80715417)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 裁判員裁判 / 裁判員制度 / 市民の司法参加 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、裁判員裁判を経験した裁判員が指摘している制度の問題点について、複数の調査を通じて得られた資料を分析することによって明らかにすることである。2年目である本年度は、他の参審制採用国で指摘されている制度の問題点や改正に向けて検討された項目について検討し、日本の裁判員制度と比較をする比較法制度研究を進めた。 他国の参審制度においては、 市民による発言が少なく、市民参加は評議に影響を与えていないという裁判官からの批判的指摘も見られる(Ivkovic2007、Machura2001、Johansen2019など)。一方、日本の裁判員制度では、裁判官によってすべての裁判員の参加を促す工夫がされていること、また、職業裁判官による発言では、市民である裁判員の視点や指摘から学ぶことや気づくことがあるといった指摘も見られる(最高裁判所によってホームページ上で公開されている「裁判員等意見交換会」の記録による)。実際、裁判員経験者のアンケート調査結果や、裁判員等意見交換会での裁判員からの発言では、審理や評議のあり方に関する積極的な発言や批判的な発言や改善点の指摘をしたものも見られる。 以上のように、日本においては、市民の司法参加が裁判官や司法のあり方に影響を与えている面もあると評価すべき点もある。しかし、他方では、日本の裁判員裁判では、裁判員が「お客様」として扱われているのではないかという指摘もなされている。本研究の次年度からの研究では、日本や他国において市民裁判員と職業裁判官との合議制の形を取る裁判制度について、その問題点の指摘に着目し、それらをさらに掘り下げていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、評議において裁判員からの質問が多いとされる刑事施設の状況やそこで行われている様々なプログラムについて、その現状を公に紹介するために、刑事施設の参観記録とその考察をまとめた。ただし、諸外国の参審制と裁判員制度とを比較する比較法制度に関する研究成果の公表が遅れているため、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
他の参審制採用国で指摘されている制度の問題点や改正に向けて検討された項目について検討し、日本の裁判員制度と比較をする比較法制度研究について、まとめた上で公表する。また、それに基づき調査項目を絞り込む。
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次年度使用額が生じた理由 |
参審制や陪審制などの市民参加型司法制度を採用している諸外国においては、その制度理念、民主的正統性との関係、審理や評議の手続上の工夫、参加した素人裁判官や職業裁判官による制度への評価に関する実証分析など、多 くの研究が蓄積されている。これらの研究遂行上必要な洋書や外国論文の購入経費や複写依頼費について、一部を次年度において使用する予定である。
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