研究課題/領域番号 |
22K01211
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
澁谷 洋平 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (20380991)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | テロ関連犯罪 / イギリス法 |
研究実績の概要 |
令和5年度は「第2期:手続面及び実務研究」を行った。 手続面研究では,公訴局によるテロ関連犯罪の訴追基準(証拠評価,公共利益評価,若年被疑者への配慮事項など)や,警察活動(逮捕に伴う14日間の身柄拘束,国境における停止・質問,捜索及び拘束など)には,犯罪の性質に照らした特別な内容が付加されていること,それゆえに人権保障のための枠組み(欧州人権条約,子どもの権利条約,1998年人権法など)との衝突が問題となり得ることが改めて確認された。 実務研究では,Security Service(MI5)がテロ関連犯罪についての疑わしい活動の届出制度を担当するほか,5段階の国家安全レベルを適宜認定していること,National Protective Security Authorityが新設され,MI5と協働していること,2023年の統計資料により,逮捕者・被訴追者・有罪判決数,量刑動向(4年から10年の拘禁刑が最多であるが終身刑もあった)ほか,人種,国籍等の内訳などを調査した。 第2期研究は令和6年7月までを予定している。この間,2021年テロ対策及び量刑法が制定されたことに伴い,仮釈放の運用をはじめ,イギリスのテロ対策に変化が生じている。現在,政府報告書や統計資料からこの2年間の運用実態について確認中である。 テロ関連犯罪については,2000年テロ法をはじめ,様々な制定法の中で捜査や公判手続に関する特別措置が設けられ,犯罪の予防や摘発が強化されている反面,人権保障との調和がより容易でない状況に陥っており,望ましいバランスをどう図るかが大きな課題であることを確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度に予定していた「第2期:手続面及び実務研究」も,前年度同様,文献資料調査という方法によるものであり,資料等をイギリス官公庁のウェブサイト等から迅速に入手することができたこともあり,テロ関連犯罪に係る刑事手続や実務の独自性や他の犯罪に係る手続との相違点を比較的容易に解明することができた。 但し,延期後,令和5年中に実施を予定していた海外調査1を実現することができなかったため,海外調査2と併合して実施するなど,工夫をして今後の研究の充実を図る必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度,5年度と,本研究は概ね計画どおりに進捗している。 「第2期:手続面及び実務研究」も予定どおり令和6年7月には完了できそうである。「第3期:日英比較研究」の着手と完了に向けて,着実に調査を進めたい。令和6年8月に予定している海外調査2において,第2期研究とともに,第1期研究に係る疑問等を解明した上で,研究成果の公表に備えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度の海外調査1が未実施であり,そもそも令和5年度の当初研究費に相当の繰越額が生じていたことが主たる要因である。 国内外を問わず,旅費の高騰により,令和5年度の国内旅費を上記繰越額から充当できたため,結果的には本課題研究をより充実した形で進めることができた。 海外調査1と2を併合することとしたため,次年度使用額と今年度配分額を合わせて,令和6年8月実施予定の海外調査の旅費に充当したいと考えている。
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