研究課題/領域番号 |
22K01221
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齋藤 由起 北海道大学, 法学研究科, 教授 (40400072)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 担保 / 保証 / 物上保証 / 倒産手続 / フランス / 資産 |
研究実績の概要 |
日本法について、本年度は、物上保証人の処遇が問題となった種々の裁判例の分析、および物上保証概念に関する学説の検討を行った。また、進行中の担保法改正についての議論の最新状況を継続的にフォローした。2023年1月に公表された日本の動産・債権担保法改正中間試案について、同年2月に、フランス語圏(フランス・ベルギー・ルクセンブルク)の担保法の専門家からの意見聴取のための国際シンポジウムが開催され、その質問票の作成・調整役・司会として参加したが、この成果を書籍の一部として共著として公表した。 フランス法について、2021年フランス担保法改正オルドナンスについては、改正後の最新の議論も踏まえつつ、2022年2月の日仏法学会において共同報告を行った片山直也教授との共著による論文を公表した。フランスにおける物上保証概念とその規制のあり方を理解する上では、事業融資をめぐる個人資産の保護に向けた政策を広く理解する必要があるが、個人事業者の資産(事業資産と個人資産)の分離を一般化した2022年2月14日の法律第172号について、個人事業者が自己の事業上の負債を担保するために自己の個人資産に属する物的担保を設定したり、保証人となることの可否について議論について検討を行った、同法律については、フランスの専門家による講演会も行い、その成果を翻訳として公表した。また、フランス倒産手続法の2021年改正による、再建型手続における救済計画における債権者の処遇や担保の処遇についても、検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、日本法における物上保証をめぐる裁判例の分析及び学説の検討を本格的に開始するとともに、2021年に改正のあったフランス法担保法・倒産手続法の検討を着実に進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、日本における物上保証をめぐる議論の検討をさらに進めて、日本法における物上保証論の輪郭を描き出すとともに、課題を明らかにする。 フランス法については、担保法・倒産手続法に関する最新の議論・立法の動向のフォローを続けるとともに、物上保証の処遇について、従来の判例及び学説の分析を進めていく。2024年9月にフランス・モンペリエにおいて開催される担保法および倒産手続法の展開に関する国際シンポジウムに参加予定であるため、同シンポジウムのための報告準備および他の報告者の報告およびシンポジウムでのディスカッションから得られる知見を、本研究を進めるために大いに生かしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、フランスにおける民法(担保法)・倒産手続法分野の書籍等の出版が、改正直後の2021年・2022年に集中したせいか想定していたよりも少なかったので、書籍の購入費用が抑えられた。また、本年度後半にフランスへの資料調査・研究打ち合わせのための海外出張を予定していたところ、2023年冬に、2024年9月のモンペリエ大学における担保法・倒産手続法に関する国際シンポジウムへの参加・報告の打診を受けたため、同シンポジウムへの参加のための資金をねん出するために(航空運賃及びホテル代の高騰により次年度の予算のみでは海外出張費用を賄いきれない)、本年度の海外出張を見合わせて、次年度の学会報告と合わせて資料調査を行うことに予定を変更した。 繰り越した資金は、次年度に出版される資料の購入費用および海外出張費用として使用する予定である。
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