研究課題/領域番号 |
22K01224
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
高橋 大輔 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (90634080)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | 児童福祉法28条 / 児童虐待 / 旧児童虐待防止法 / 親権 / 親子法 / 親権制限 |
研究実績の概要 |
本研究課題については、科学研究費助成を受ける以前に、その準備段階として、拙稿「親権制限と児童福祉法28条の関係(判批大阪高決令和元年5月27日判時2429号19頁)」判例時報2464号(2021年2月、154~158頁、単著)において、研究成果の一端を公表している。しかし、当該論文においては、紙幅の都合もあり、「現行法」の解釈論についてのみ言及しており、沿革的な研究や比較法的研究は行うことができなかった。そのため、2021年からまず児童福祉法28条を沿革的に研究していた。 2022年度においては研究実施計画に従い、2021年度までの研究を進めると共に、その研究結果を拙稿「児童福祉法28条の成立史-旧児童虐待防止法2条を中心として―」茨城大学人文社会科学部紀要人文社会科学論集2号(2023年2月、137~148頁、単著)として公表することができた。 具体的には、研究を通して以下の点を明らかにした。すなわち、児童福祉法28条は旧児童虐待防止法2条を引き継いだものであるけれども、旧児童虐待防止法2条の時代には、親子を分離する際に裁判所の承認が必要とされなかったため、裁判を必要とする親権制限と、裁判を必要としない旧児童虐待防止法2条という棲み分けがなされていたこと。戦後、児童福祉法が制定され、児童福祉法28条において裁判所の承認が求められることとなり、理論的には親権制限との法的関係が問題となり得る状況が出現したけれども、しかしながら、2011年の民法改正以前は、親権停止制度が存在せず、親権喪失制度の要件が厳格であったため、現実にはその関係が問題としてほとんど重視されず、2011年の民法改正による親権停止制度の導入を経て、現在のように児童福祉法28条と親権制限の関係が問題となってきたことを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、研究計画に従い、それまでの研究を進め、その研究結果を論文として公表できたため、本研究課題が「おおむね順調に進展している」と評価した。特に、2022年度の研究を通して、「研究実績の概要」内で先述した点を明らかにしたことは本研究課題を進めていく上で非常に役立った。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い、2023年度、2024年度においては、比較法的示唆を得るため、ドイツ法における子どもの保護と、日本の親権に相当する親の配慮(Elterliche Sorge)の制限について研究する。このとき、日本国内においては以前から親権の部分的制限の「難しさ」については指摘のあるところである。具体的には、例えば部分的に親権を制限したとしても、残存している親権を理由に親権者が不当な親権行使を行う危険が残り、結局のところ問題の解決にはならないのではないかとの難しさや危険性が指摘されてきた。そのため、2023年度および2024年度の研究においては親の配慮の部分的制限を導入しているドイツにおいて、その運用方法やその際の注意点などについても調査する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
300,000円のうち、299,800円でノートパソコンを購入した。そのため、200円の次年度使用額が生じた。2022年度においては、必要な物品を200円で購入することは難しかったため、次年度使用額が生じた。2023年度に文献を購入する費用に充当する予定である。
|