研究課題/領域番号 |
22K01245
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
牧 真理子 福岡大学, 法学部, 准教授 (60648054)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 役員の責任 / D&O保険 / 会社補償 / 経営判断原則 / ドイツ株式法 |
研究実績の概要 |
本研究は、会社補償およびD&O保険を含め、役員の責任救済制度を包括的に検討するものである。研究の初年度であった2022年度は、今後当該分野のドイツ法を比較対象とした研究を行うために、第一に、ドイツにおけるD&O保険をめぐる基本的な議論状況の整理、確認を進めた。第二に、ドイツの経営判断原則に関する最近の文献を渉猟し、判例および学説の検討を行った。 第一の点については、ドイツのD&O保険制度は、取締役に一定の経済的負担を課す規定を置くことにより、取締役のモラルハザードを抑止する目的を強く打ち出して設計されているようだが、十分な効果があるとはいえないこと等を中心に、制度の理解に努めた。第二の点については、ドイツの経営判断原則は、明文で規定されていることが特徴的であるが、わが国の同制度と比較検討が可能であると考えられている。そこで、本研究において、ドイツにおける取締役の経営判断に関する責任追及のあり方も検討した。 本年度は、第二の点について、一部の成果を公表した。当該論文では、ドイツでは、取締役の経営判断について判断過程の審査が過剰に課せられてしまった状況もあったが、現在では当該審査は合理性があると解される程度に落ち着いたこと、このようなドイツにおける経営判断原則のあり方は、わが国の運用においても参考になりうることを示した(拙稿「経営判断の過程の審査についてードイツ法の検討」法学86巻4号(2023年)153頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の初年度である2022年度は、本研究に関する議論状況の基礎的整理を進める予定を立てていた。しかし、ドイツ法の分析は一定程度進められているものの、会社補償制度に関する議論状況の整理・検討に全く着手できなかった。もっとも、ドイツの経営判断の過程の審査について検討を行い、その経過の成果として論文を公表できたことは、当初の予定よりも進んでいる。それゆえ、全体の進捗状況としてはやや遅れていると評価するが、全体として支障が出るほどではないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、現在の進捗状況で述べたとおり、ドイツの会社補償制度に関する議論状況の整理・検討に着手できていないため、最優先で進める。これを踏まえて、ドイツにおける役員の責任追及に対する救済制度がそれぞれにどのように作用するのが望ましいのか、包括的に研究を進める。研究の進捗にあわせて、所属する研究会で適宜報告を行う予定にしている。 加えて、本研究に関係する裁判例について、判例評釈の形で研究および報告し、執筆を進める予定にしている。この判例研究を通して、わが国の問題状況の整理も行う予定である。 以上を元にして、来年度以降の本研究の発展と応用について調整と方向性を示していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウィルス感染症の影響により研究会出席の主張を控えたため、次年度使用額が生じた。今年度は研究会報告の実施が可能になると思われるので、旅費に充当する予定である。
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