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2022 年度 実施状況報告書

子ども養育をめぐる法整備と支援制度の構築に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K01266
研究機関早稲田大学

研究代表者

棚村 政行  早稲田大学, 法学学術院, 教授 (40171821)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード子の養育 / 親権 / 監護 / 面会交流 / 養育費 / 共同養育 / 共同親権 / 当事者支援
研究実績の概要

2022年度は、研究代表者は、法務省民事局と連携して、子ども養育支援サービスモデル推進事業を実施するとともに、全国に先駆けて子ども養育支援モデル事業を開始した兵庫県明石市のほか、東京都江戸川区、板橋区、宮城県利府町、新潟県、石川県、大分県、三重県伊賀市、山口県宇部市、大阪府八尾市、大阪府狭山市、羽曳野市など大中小規模の各基礎自治体において、離婚前後の子ども養育支援制度や関係機関の連携の在り方についてのモデル自治体としての調査研究を実施した。また、コロナ禍が依然として続いていたため、現地調査やヒヤリング調査の実施はできなかったが、アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、韓国などでのオンライン調査、文献調査研究を進めることはできた。2023年3月4日、家族と法研究会と養育支援制度研究会の合同シンポジウム「海外における子ども養育の在り方に関する法制の動向」をオンラインで開催し、「アメリカ」原田綾子名古屋大学教授、「オートすらリア」は古賀絢子東京経済大学准教授、「イギリス」は橋本有生早稲田大学教授、「ドイツ」は喜友名菜織兵庫県立大学専任講師による報告があり、その後のパネルディスカッションが行われた。研究代表者が委員を務める法制審議会家族法制部会では、養育費、親子交流、離婚後の共同親権・共同監護、DV・虐待への配慮、子の意思の尊重などについて現行法の規定の見直しをする「中間試案」を公表し、パブリック・コメントに付したところ、2023年2月17日に締め切り、8000件を超える個人・団体からの意見が寄せられた。同部会では、パブコメの結果を踏まえて、さらに当事者・有識者らのヒヤリング調査を実施し、2023年3月からは具体的な法整備の在り方を検討している。また、法務省は、自治体の取り決め支援、離婚時の情報提供支援の調査研究事業を行っており、研究代表者は、法務省のアドバイザーを務めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年4月、法務省における離婚時の情報提供の在り方をめぐる調査研究事業として、研究代表者を中心に、直原富山大学専任講師、浜田弁護士、平田東京大学准教授、福丸白梅学園大学教授をメンバーとする「離婚後養育講座」研究会が設けられた。2022年5月、研究代表者は家族と法研究会において「子の養育の在り方をめぐる法整備―法制審議会家族法制部会での議論」の報告を行った。2022年7月には、2022年度法務省養育費不払い解消等に向けた自治体の法的支援・紛争解決支援調査研究事業の第1回意見交換会がオンラインで開催された。2022年8月、法務省のモデル事業である「離婚後養育講座」の研究会では、2分動画、4コマ漫画などの導入視聴用の最終版に盛り込む法的心理的福祉的情報等について検討を行った。2022年9月、「離婚後養育講座」研究会では、養育費自動計算ツール、親子交流日程調整ツール、プレADRツール、短編編動画・4コマ漫画などの決定をした。2022年10月、養育費不払い解消の法的支援及び紛争解決支援のモデル事業参加自治体との全体意見交換会をオンラインで実施した。2022年11月から12月初旬にかけて、モデル自治体との中間打ち合わせを実施した。2023年2月、法務省の離婚時の情報提供の在り方に関する調査研究事業の参加自治体による意見交換会が開催された。2023年2月には、法務省養の調査研究事業での参加自治体での弁護士によるオンライン法律相談、司法書士による申立書作成、調停・審判申立書作成・家庭裁判所のオンライン手続案内、民間ADR・ODR利用促進、強制執行・親子交流支援等の実施状況について意見交換がなされた。2023年2月、LAWASIA家族法部会で、日本橋の国際商事法研究所において、「法制審議会家族法制部会の中間試案について」のシンポジウムが開催され、研究代表者も研究者の立場から報告を行った。

今後の研究の推進方策

2022年6月には、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神に則り、次代の社会を担うすべてのこどもが個人として健やかに成長し、将来にわたって幸福な生活が送れる社会を目指す「こども基本法」、こども政策を総合的に推進する「こども家庭庁設置法」が成立した。そして、2023年4月からは、内閣府の外局として、こども基本法を推進・実現するための総合司令塔として、また、こどもを真ん中におき、こども施策を総合的に推進する「こども家庭庁」が本格的にスタートした。そこで、本研究課題でもある、離婚後の子ども養育の在り方に関する法整備と当事者支援の強化のためにも、家庭における子育て支援体制の整備、こどもの安心・安全な生活環境の整備に関する施策の企画・立案・総合調整、子どもの虐待防止、こどもの権利利益の擁護などを具体的に実施する「こども家庭庁」との連携が重要である。例えば、自治体を基点とした子の養育をめぐる法的紛争予防及び解決支援、離婚時の情報提供、親ガイダンス等の支援の強化が図られなければならない。研究代表者は、法務省と関係省庁との連携協力体制の中で、法整備とともに、社会的支援制度の強化にも取り組んでいく。また、法制審議会家族法制部会は、中間試案に対するパブコメを踏まえて、養育費、面会交流のほかに、離婚後の共同親権・監護の選択肢を提供する方向で、2023年4月に一定の基本的方向性では合意がなされた。しかし、実際には、当事者が離婚後の親権者について真摯な合意ができる場合とはどのような場合か、また、父母間での合意ができない場合やDV・暴力等で安心・安全が確保できない場合での具体的な規律の在り方、裁判所や法律家などの専門家の関与の方法、親権・監護の具体的な内容や意見が対立した場合の対応等で、具体的な審議が行われている。そこで、研究代表者及び研究会では、具体的な制度設計やルール作りでの有効な提言を行う。

次年度使用額が生じた理由

予定していた消耗品の支出が不要になったので、今年度分の消耗品の支出に充てる予定。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (1件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 選択的夫婦別氏制を導入しない立法不作為と国家賠償法上の違法性2023

    • 著者名/発表者名
      棚村政行
    • 雑誌名

      私法判例リマークス

      巻: 65 ページ: 58-61

  • [雑誌論文] 中間試案について―研究者の立場から2023

    • 著者名/発表者名
      棚村政行
    • 雑誌名

      ジュリスト

      巻: 1582 ページ: 14-19

  • [雑誌論文] 家族とはなにか2022

    • 著者名/発表者名
      棚村政行
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 807 ページ: 24-29

  • [雑誌論文] 指定コメント2022

    • 著者名/発表者名
      棚村政行
    • 雑誌名

      家族〈社会と法〉

      巻: 38 ページ: 81-84

  • [雑誌論文] 2022年学界回顧―家族法2022

    • 著者名/発表者名
      棚村政行
    • 雑誌名

      法律時報

      巻: 94 ページ: 91-94

  • [学会発表] 公開シンポジウム「DNA親子鑑定技術がもたらす家族観のゆらぎと法的・社会的課題」 棚村政行「実親子関係の成立とDNA親子鑑定」2022

    • 著者名/発表者名
      棚村政行
    • 学会等名
      日本学術会議臨床医学委員会臨床ゲノム分科会
  • [図書] 調停制度100年2023

    • 著者名/発表者名
      棚村政行
    • 総ページ数
      324
    • 出版者
      日本調停連合会
  • [図書] 離婚後の親子関係2022

    • 著者名/発表者名
      棚村政行
    • 総ページ数
      135
    • 出版者
      日本加除出版
  • [図書] 早稲田大学法学会百周年記念論文集第二巻民事法編2022

    • 著者名/発表者名
      棚村政行
    • 総ページ数
      484
    • 出版者
      成文堂

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公開日: 2023-12-25  

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