研究課題/領域番号 |
22K01274
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 いつ子 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (00262139)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | デジタル統治 / 人工知能(AI) / 言論・表現の自由 / 情報権力分立 / データ・フェアネス / 名誉毀損・侮辱・誹謗中傷 / プライバシー / 著作権 |
研究実績の概要 |
本研究期間の初年度である本年度には、交付申請書に記した研究実施計画における3つの柱の全体的な見取り図につながる、以下の2つの成果があった。
第1に、日本公法学会において昨年度に行った研究報告の内容を発展させ、デジタル変革(DX)・人工知能(AI)時代のデジタル統治の覇権争いと「情報権力分立(separation of information powers)」のダイナミズムをめぐり、より具体的な結論となる次の2点を明らかにした。すなわち、1点目は、もし統治権力に対峙して抑制・監視を担う「挑戦者(challengers)」がいなければ、その存在をも創り出す積極的な制度設計が要請されうる、ということである。また、2点目は、表現・情報・データ等を広く含む「知」の自由とそれを成り立たせる条件に関して、①憲法上の保障の明確化、②立法政策の整備、及び③国際的なルール形成、などの複数の担保的措置を実効的かつ多元的に組み合わせていくことの重要性である(後掲欄の『公法研究』掲載論稿を参照)。
第2に、初めてアフリカ大陸において開催された、4年に1度の国際憲法学会世界大会(ヨハネスブルグ大学)に対面で参加し、ワークショップ32にて招待報告を行うとともにそのSecond Session Chairを務める機会に恵まれた。同報告では、デジタル環境における言論・表現の自由と名誉毀損・侮辱・誹謗中傷・プライバシー侵害・著作権侵害に関する諸課題とその対応の在り方について、日米欧比較分析の観点から、近年の日本における立法措置・判例法理に見出せる固有性と普遍性を明らかにした。その上で、被害の実効的な救済のためのグローバルな規模での取組みを促すべく、「データ・フェアネス」を具現化させる(physicalizing “data fairness”)必要性を指摘した(後掲欄のIACL-AIDC学会発表を参照)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が続いたことから、当初計画を一部見直しながら、本研究を遂行した。そうした状況の下で、必要な対応措置を講じて、前掲の「研究実績の概要」欄に記載したように、対面での大規模な国際学会活動の再開に向けた海外からの招待を受けて、国際的な研究活動にできる限り積極的に取り組んだ。その結果として、当初計画では予期していなかった形で、本研究課題に関する国内外の研究者・実務者等との意見交換・議論・レビュー等を効率的に進め、また、本研究に対する高い評価を得ることができ、さらに、研究連携ネットワークも広がるなどの成果があった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、前掲の「研究実績の概要」欄・「現在までの進捗状況」欄に記載したように、新型コロナウイルス感染拡大の影響が続く中でも、当初の計画以上の進展と成果があった。そこで、今後も引き続き、適宜、感染状況に応じて必要な措置を講じながら、基本的には、交付申請書に記載した研究実施計画に基づいて、本研究を遂行する予定である。
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