研究課題/領域番号 |
22K01282
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
赤渕 芳宏 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (60452851)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 環境法 / 予防原則 / 利用可能な最善の科学 / リスク管理 / 絶滅の危機にある種に関する法律 |
研究実績の概要 |
2022年度は、主として次の2つの作業に注力した。第1に、「絶滅の危機にある種に関する法律」(ESA)において定められる「利用可能な最善の科学」概念に関し、議論動向の把握に努めた。具体的には、文献データベースや既存の学術文献を用いて、関連する裁判例や論文、書籍などについての概観的な調査と収集とを行った。本研究は、ESAをはじめとするいくつかのアメリカ環境法律が採用する〈利用可能な最善の科学〉概念に注目し、これを予防原則の適用条件として採用することの妥当性を検討することをその目的としており、こうした調査は、同目的のもとで引き続き行われる分析・考察のための情報基盤を構築するといった意義がある。 また、第2に、アメリカの環境法学説の一部で有力に説かれる、〈ESAでは予防原則が具体化されている〉との言説について、改めてその実質を吟味するべく、そのための準備作業を行った。これは、本研究を進めるにあたっての前提を今一度確認しようとするものである。今後、ESAの立法資料にみられる「疑わしきは種の利益に」(give the benefit of the doubt to the species)、および同法に関する著名な連邦最高裁判所判決であるTennessee Valley Auth. v. Hill, 437 U.S. 153 (1978)がいう「制度化された注意」(institutionalized caution)といった説示について、これらが学説や裁判例においてどう捉えられているか、また、アメリカ環境法学における予防原則論の中でESAはどのように評価されているか、などについて分析を進めることとしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、研究初年度である2022年度には、「利用可能な最善の科学」概念に関する裁判例および学術文献の渉猟と分析とを行うことを計画していた。だがこれは、次の2つの理由から、予定されたほどは進んでいない。第1に、本研究課題とは直接には関わりのない論文の執筆に作業時間を費やしたこと、第2に、上記「研究実績の概要」の第2点において指摘した、当初の研究実施計画に含めていなかった(が、本研究を進めるにあたって必要と考えるに至った)検討作業を追加して行うこととしたこと、である。以上を総合して判断した結果、上記の区分のように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目にあたる2023年度は、前年度に収集した「利用可能な最善の科学」概念に関する学術文献および裁判例の分析を進めるとともに、引き続き研究資料の概観的調査と収集とを行う。 これに加えて、「研究実績の概要」において指摘した、〈ESAでは予防原則が具体化されている〉との言説についての分析も同時に進める。これについては今年度中に作業を完了させ、その成果をとりまとめたいと考えている。先に触れたTVA判決のいう「制度化された注意」概念は、その後の90件近くの裁判例で言及されていることを確認しているほか、関連する学術文献の同定作業もすでに終えている。これらを対象として、かかる概念がどのような文脈において参照されているのかなどについて検討を加えることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由の大半は、2022年度に予定していた出張が、新型コロナウイルス感染症による影響のため軒並みキャンセルとなったことにより、旅費としての使用がなかったことに帰せられる。これにより生じるおそれのあった知見の不足は、関連文献を追加的に収集することにより補うこととした。 2023年度には、複数の学会・研究会が対面での開催となることが予定されており、かかる次年度使用額は主として旅費および物品費(書籍の購入)に充当することとする。
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