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2022 年度 実施状況報告書

グローバルサプライチェーン時代に適合した特許権侵害の法理及び民事救済措置の研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K01283
研究機関名古屋大学

研究代表者

鈴木 將文  名古屋大学, 法学研究科, 教授 (90345835)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード知的財産法 / 国際私法 / 民法 / 国際経済法
研究実績の概要

本年度は、研究テーマについての研究を進めるとともに、以下の研究成果公表の機会を得た。
第一に、サプライチェーンにおける特許権侵害の問題をテーマとするシンポジウムを、2022年度工業所有権法学会の研究大会で企画・実施し、そこで総論及び複数主体が関与する侵害についての報告を行った。これは、必ずしも越境的な事例を想定した検討ではないが、その検討の基礎となる課題についての分析であり、本研究にも非常に有意義であった。なお、報告内容については、同学会年報に論文を掲載予定である(2023年6月刊行予定)。
第二に、研究テーマに直接かかわる事例に関する裁判例について、詳しい検討を行い、その成果を研究会で報告するとともに、論文として公表した。
具体的には、一つは、L-グルタミン酸製造方法事件に係る東京地裁判決(東京地判令和2.9.24平28(ワ)25436号)である。これは、越境的取引に係る譲渡の申出、外国で生じた損害についての損害賠償算定等、本研究の対象とする論点を正面から取り上げている。もう一つは、ドワンゴ対FC2事件に係る東京地裁判決(東京地判令和4.3.24令元(ワ)25152号)及び知財高裁判決(知財高判令和4.7.20平30(ネ)10077号)である。この事件は、ネット配信される動画にコメントを同時に表示するサービスに係る物の発明と方法の発明に係る特許との関係で、サーバーが外国に所在する被告らのシステムが問題となった事例である。本事件では、特許制度に係る属地主義の意義が問われており、本研究にとっても、基礎的な論点について検討するうえで好適な検討対象となった。
第三に、国際的な研究活動として、EUの特許制度の動向に関する国際シンポジウムを開催し、欧州の専門家との意見交換を行ったほか、東南アジア等の研究者との意見交換も実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度、日本工業所有権法学会において、本研究のテーマに関連するシンポジウムを企画し、報告を行う機会を得た。また、本研究テーマに直接関係する重要な裁判例(東京地判令2.9.24、東京地判令4.3.24等)に関する検討を行い、その成果を研究会で報告するとともに、論文として公表することができた。さらに、ドイツ等の研究者及び実務家との間で、本研究テーマに関し、意見交換をすることもできた(2023年3月の国際シンポジウム)。これらを通じて、本研究における基礎的な事項、すなわち、特許権の属地主義、特許発明の実施行為の地理的限界に関する解釈、複数主体が関与する行為と特許権侵害の関係、サプライチェーンにおけるライセンスのあり方及び消尽についての考え方、間接侵害論、外交で発生した損害についての損害賠償可能性、比較法研究等について、検討を深めることができた。具体的には、例えば、属地主義の下でも、侵害行為の一部が外国で実行される事例について、柔軟な法解釈によって特許権侵害を肯定する余地が十分にあることが、理論的検討及び比較法研究によって、明らかになった。また、複数主体が関与する特許権侵害について、理論的な類型化を行うことができた。

今後の研究の推進方策

2023年度は、前述のドワンゴ対FC2事件の控訴審判決(知財高裁特別部判決)が5月末に出されたことから、その分析を行い、論文として年度内に公表予定である。また、6月に開催される日本工業所有権法学会のシンポジウムにおいて、越境的な行為による特許権侵害の問題が取り上げられる予定であり、その結果を(場合によっては批判的に)踏まえつつ、理論的及び実務的な検討を進める予定である。さらに、標準必須特許を素材として、国際的な特許紛争の動向をフォローする。また、海外(欧州、米国及びアジア)の研究者との意見交換も継続的に実施する。これらを通じて、特に、属地主義の限界、発明実施行為の解釈、間接侵害論等に焦点を当てつつ、研究を深化し、その成果を公表する。さらに、2024年度は、越境的な侵害行為に対する救済措置のあり方、国際的な侵害訴訟の審理・判断体制のあり方等の検討を行うとともに、研究の総まとめとしての論文の公表と研究成果公表のための研究会の開催を予定している。

次年度使用額が生じた理由

2022年度、円安の進行や航空運賃の上昇等を背景として、年度末に予定していた国際シンポジウム(欧州の裁判官、研究者及び実務家を招いて特許制度について論じる国際会議)の経費が予定を大幅に上回る可能性が生じたため、次年度交付予定額の前倒し執行を申請した。しかし、国際シンポジウムの費用の増加額が、懸念していたほどの規模にならずに済んだため、それに充てる予算を次年度の研究活動(具体的には、年度後半に予定している、香港城市大学の研究者等の海外研究者の招聘費)に充てることとし、次年度使用が生じた。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] フライブルク大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      フライブルク大学
  • [国際共同研究] IT企業知財専門家(マレーシア)

    • 国名
      マレーシア
    • 外国機関名
      IT企業知財専門家
  • [雑誌論文] 越境的な行為への「譲渡の申出」の適用、損害の範囲及び均等論が問題となった裁判例について ―L-グルタミン酸製造方法事件一審判決―2023

    • 著者名/発表者名
      鈴木將文
    • 雑誌名

      知的財産法政策学研究

      巻: 67 ページ: 241-284

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Patent Infringement through Use of Servers Located outside Country: Dwango v. FC2 Case2023

    • 著者名/発表者名
      Masbumi Suzuki
    • 雑誌名

      Patents & Licensing

      巻: 52(4) ページ: 1-17

  • [雑誌論文] 越境的要素を有する行為による特許権侵害2023

    • 著者名/発表者名
      鈴木將文
    • 雑誌名

      Law & Technology

      巻: 98 ページ: 11-23

  • [学会発表] サーバが外国に設置されているシステムによる特許権侵害の成否(判例研究)2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木將文
    • 学会等名
      東京大学知的財産法研究会、北海道大学知的財産法研究会
  • [学会発表] 判例研究・東京地判令和4年3月24日(令和元年(ワ)25152号)(ドワンゴ対FC2事件)2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木將文
    • 学会等名
      2022年度知的財産判例研究会第4回例会
  • [学会発表] サプライチェーンにおける特許権侵害2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木將文
    • 学会等名
      国際シンポジウム『サプライチェーンと知的財産制度-特許消尽論を中心として-』
    • 国際学会
  • [学会発表] 趣旨説明・複数主体が関与する侵害2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木將文
    • 学会等名
      日本工業所有権法学会研究大会シンポジウム『サプライチェーンにおける特許権侵害』
  • [備考] 鈴木研究室-論文等

    • URL

      https://www.law.nagoya-u.ac.jp/~msuzuki/paper-list.html

  • [学会・シンポジウム開催] 欧州単一特許・統一特許裁判所制度の動向2023

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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