研究課題/領域番号 |
22K01288
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
三浦 正広 国士舘大学, 法学部, 教授 (90265546)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 著作権契約 / 著作者契約法 / 相当報酬理論 / 著作者人格権 / 著作権 |
研究実績の概要 |
本研究は、ドイツ法およびEU法において導入されている、著作者契約法における相当報酬理論について、学術の発展、文化の多様性を促進する立場から、情報技術社会のイノベーションとともに変容している著作権制度の将来の方向性を意識しつつ、日本法への適用可能性についての理論的考察を目的とするものである。 本研究課題を推進するために、2022年度は、デジタル環境下で飛躍的に増加している著作物の利用に対する対価としての相当報酬制度を理論的に分析するとともに、著作者の契約上の地位を保障する著作者契約法の観点から、ドイツ著作権法における具体的な法規定を受けて策定されたEUデジタル域内市場(DSM)指令によって採用された相当報酬理論について理論的研究を行なった。 当初の研究実施計画にもとづき、相当報酬理論を理解する上で不可欠な著作者の権利の性質について、ドイツ法を中心とした基礎研究を重点的に行なった。著作権法の現代化のなかで変容する著作者の権利の性質については、ドイツおよびEU諸国と日本とでは温度差があり、相当報酬理論に対する認識に違いがあることを確認した。 今年度の研究実績として、国際著作権法学会への出席および滞在研究を行ない、国際的な議論状況の把握に努めた。また、ドイツ法およびEU法に関する相当報酬理論および著作者契約法をテーマとする2本の論文を公表するとともに、著作権管理団体のウェブサイトにおいて、今回の研究テーマを中心に、ドイツ著作権法に関する解説記事を配信している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示したように、本研究は、課題の目的に従い、ほぼ計画どおりに進行している。当初の研究計画では、コロナ禍により国外における調査研究が困難であることが予想されたために、2022年度は文献調査による理論的分析を中心に行うことを予定していたが、欧州においてコロナ禍が収束傾向にあることから、本課題研究をより積極的に進めるために、ドイツ・ミュンヘンのマックス・プランク研究所における調査研究を実施した。欧州における戦争の煽りを受けてか、サイバーセキュリティ強化の影響により、これまでのような自由な環境とはいえなかったが、ほぼ計画どおりに研究をすすめることができた。 また、2022年9月にポルトガル・エストリールで開催された国際著作権法学会(ALAI)の年次大会に出席し、学会報告および個別セッションにおいて、国際学会における議論の動向、各国の議論状況について情報交換を行なった。 研究成果として、論稿「EUデジタル域内市場(DSM)指令にもとづくドイツ著作者契約法改正-相当報酬理論を中心として-」を著作権専門誌「コピライト」2022年9月号(著作権情報センター)に掲載し、また、学会報告にもとづいた論稿「EUデジタル単一市場指令における撤回権」を、日本国際著作権法学会により2022年度から新たに創刊された学術雑誌「国際著作権法研究」1号(日本国際著作権法学会)に掲載した。 そのほか、日本複製権センター(JRRC)のメルマガ配信サイトにおいて、これまでの研究成果を含めて「ドイツ著作権法 思想と方法」と題して、本件研究課題に関連する著作者契約法の個別テーマについて月1回の連載を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画にしたがい、ドイツ法およびEU法に関する、これまでの著作権の性質に関する研究、および相当報酬理論に関する調査研究にもとづき、理論的分析に関する研究を継続的に行う予定である。とくにドイツ法においては、改正法の解釈論的分析を試みるとともに、改正法にもとづいて蓄積されつつある裁判例について事例研究をすすめる予定である。また、EU法についても、EU司法裁判所の判決について判例理論の分析を行ないたいと考えている。 改正されたドイツ著作権法および新たに策定されたEU法に関する文献は極めて少なく、今後刊行される文献資料について調査分析をすすめ、さらなる状況の把握および理論的考察を行いたいと考えている。さらに、新たに制定された著作権プロバイダー責任法について、それぞれの内容について精査して理解を深めると同時に、著作者契約法との関係についても分析的研究をすすめたいと考えている。これを実施するために、昨年と同様にドイツにおける在外調査研究を行なう予定である。 また、本研究により得られた知見を研究成果として論文として公表するとともに、これまでの研究成果を統合した論稿集の刊行も予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況に示したように、本研究は、研究課題の目的に従い、概ね順調に計画どおりに進行している。2022年度は当初の研究計画のとおり、ポルトガル・エストリールで開催された国際著作権法学会(ALAI)の参加や、ドイツ・ミュンヘンのマックス・プランク研究所における渡航調査を執行することができた。 次年度使用額は、少額の繰越金となるが、文献資料分析に使用し、2023年度の研究計画においても、前年度と同様にマックス・プランク研究所での図書資料調査等の計画に向け、執行する予定である。
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