研究課題/領域番号 |
22K01298
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山崎 幹根 北海道大学, 大学院公共政策学連携研究部, 教授 (30295373)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 規制政策 / タバコ / アルコール / イギリス / スコットランド / 領域政治 |
研究実績の概要 |
今年度は、イギリスのタバコ・アルコール規制政策の動向を中心に実証的に考察した。イギリス政府のスナク首相は2009年以降に出生した人の紙巻タバコ購入をイングランドにおいて禁止する法案の制定を表明し、立法化が具体化している。喫煙自体が非合法化されるわけではないが、喫煙可能な年齢を毎年一歳ずつ引き上げることによって、将来的には実質的に紙巻きタバコの販売禁止が実現することになる。なお、保健医療分野の立法はスコットランド議会に権限移譲されているので、スコットランドが喫煙年齢引き上げの立法化をイングランドよりも先行して実施するのかが論点となる。また、加熱式タバコに関して、特に一回限りの使い捨てのタイプが、児童・生徒の喫煙の助長、使用後のごみとしての処分が問題化している。スコットランド政府は2025年4月から販売禁止する立法化を具体化している。この法案も、同様の立法化を検討しているイギリス政府との関係が焦点となる。 アルコールの規制政策では、スコットランドが2018年に導入した最低販売価格法を改正し、一ユニット当たりの最低価格を50ペンスから65ペンスへの引き上げを決定した。その背景には、アルコールの消費が減少するなど2018年法の政策効果を認めつつ、インフレに対応した価格の引き上げを行うなど実効性を高める観点から、改正を行った。アルコールの最低販売価格法はイングランドには適用されておらず、ウェールズは2020年に一ユニット当たり50ペンスでの規制を導入しており、領域間の差異が顕在化している。 このように、イギリスでは、アルコール規制に関しては領域間の分化が見られる一方、タバコ規制に関しては移譲権限にもかかわらず同化の傾向が見られる。その異同に関して、政策アイデア、資源、制度、政策環境などの諸要因に注目しつつ、次年度以降いっそうの分析を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はイギリスにおいてタバコおよびアルコールの規制政策に新たな立法化の動向が見られたことから、その動向を中心とした事例研究を行うことによって成果を得た。一方で、コロナウィルス感染対策の影響から地方自治体の保健衛生担当部局等に対する調査を慎重に行うよう情勢を見極めていたことから、日本における規制政策の検討がやや遅れている。なお、文献調査等は継続的に行っており、例えば福島市における受動喫煙防止条例の実証研究を参考に、地方自治体の独自性の多寡、条例の実効性、条例違反の実態、自治体による罰則適用の対応戦略に注目することの有意性を引き出しており、こうした知見を活かしつつ、次年度以降、他地域の状況把握に努めるよう留意する。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画を発展させる形で、規制政策が領域的に分化(divergence)と同化(convergence)を生じさせる政策に注目しながら、事例研究、理論研究の双方を推進させてゆく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究において、経費を効率的に執行することができたこと、さらに、別用務でスコットランドに渡航した際にその機会を利用し、スコットランド国立図書館を訪問して調査活動を行うことができたことによって研究費を節約できたことが大きい。残額については、次年度におけるイギリスおよび日本のアルコール・タバコ規制政策に関する調査のために使用する。
|