研究課題/領域番号 |
22K01299
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
川島 佑介 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (60760725)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ガバナンス / ロンドン / 都市開発 / 都市再開発 / ロンドン五輪 / 中央地方関係 |
研究実績の概要 |
2023年度は、文献調査とオンラインでの資料収集、および過去に入手した資料の解読を行い、以下の三点の成果を得た。 第一に、前年度に引き続き、中央政府とその行政機関であり、オリンピックのインフラ整備を担当したODAの文書を読み込んだ。これによって、ロンドン五輪を契機にした東ロンドン再開発は、オリンピックの理念や時間といった外的制約に強く規定されていたことを確証できた。逆説的ではあるが、多くの強い制約は、利害の調整における「落としどころ」であるため、アクター間の調整が円滑に進んだ原因として考えられる。 第二に、広域自治体であるGLAと、基礎自治体であるBoroughs、さらにその協議体といった地方自治体の再開発計画文書を時系列に解読した。自治体は、再開発の既成事実化を主張し、それに必要な中央政府からの補助金を繰り返し求めていった。しかし、中央政府の反応は必ずしも、それに応えたものではなかった。そのため、将来像は練り上げられていくものの、数値化された再生計画(子どもの教育水準、雇用率、平均余命、スポーツ習慣等)の進捗はすべて順調とは言えないことが明らかになった。 第三に、「DeliberateからDeliveryへ」とも言われる、プロセスよりも結果重視の志向性が、研究者からだけではなく、再開発を手掛けたODAや地方自治体によっても肯定的に主張されていることを発見した。ただし、これが民主主義の後退なのか、それとも評価を介した新たな民主主義のあり方なのかについて判断するには、一層の研究を要する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究自体は確実に進んでいるものの、分析にとりあげなければならない文献・資料が続々と発見されるため、論文執筆や在外研究に至らなかった。また、校務負担や他の研究プロジェクト、私的理由等で思うように研究時間が取れなかったこともあり、コアとなるアイディアは固まったものの、論文執筆には至らなかった。 しかし、研究は進んでおり、挽回も可能な範囲であるため、「(3)やや遅れている。(Slightly Delayed)」に相当する。
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今後の研究の推進方策 |
遅れがあるものの、基本的には堅実に研究は進捗しているため、やや後ろ倒しにしつつも、予定に即して研究を進める。すなわち、2024年度は、引き続き、関連する資料を収集、分析することで、諸組織間の協調体制の成立過程を解明する。あわせて、可能なところから論文を発表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が、学内外の業務で多忙であったため、物品費・旅費を中心に未執行額が発生した。これが次年度使用額の発生に繋がっている。 今後は、研究遂行に必要な物品の購入や、現地調査の実施などを通じて、研究実施計画の遅れを取り戻していくことを目指す。
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