研究課題/領域番号 |
22K01304
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小田川 大典 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (60284056)
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研究分担者 |
安武 真隆 関西大学, 政策創造学部, 教授 (00284472)
遠藤 泰弘 松山大学, 法学部, 教授 (30374177)
石川 敬史 帝京大学, 文学部, 教授 (40374178)
森 達也 神戸学院大学, 法学部, 准教授 (40588513)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 政治理論 / 政治思想史 / インテレクチュアル・ヒストリー / リベラリズム / 啓蒙 / アメリカ建国史 / 自由論 / ドイツ公法思想史 |
研究実績の概要 |
2022年度は、本研究の課題(0)ロールズ革命とスキナー革命以後における政治理論研究と政治思想史研究の対話と相互貢献の可能性の模索を念頭に、主に(1)ロールズ革命以降の政治理論研究の思想史的な検討と(3)政治思想史と政治理論の具体的な対話と相互的貢献の試みの検証という二つの課題に取り組んだ。 (1)については、ロールズによって決定的な方向づけが行われた現代の市民的不服従(Civil Disobedience)論についての最新の研究であるウィリアム・ショイアマン『市民的不服従』(人文書院、2022年)について、小田川と監訳者の森とで検討を行ない、ゲストスピーカーとしてロールズ研究で名高い田中将人氏を招聘し、合評会(2023年3月)を行なった。また、日本18世紀学会啓蒙思想の百科事典編集委員会編『啓蒙思想の百科事典』(丸善出版、2023)に「ホッブズ」の項目を寄稿した。 (3)については、安武が、日本イギリス哲学会(2023年3月26日、愛知教育大学)で研究報告「ロック『統治二論』におけるスコットランド」を行ない、前掲『啓蒙思想の百科事典』に「共和主義」と「『マキァヴェリアン・モーメント』(ポーコック)」を寄稿し、石川が、『中央公論』2022年7月号に「アメリカ合衆国はエンパイアの夢を見るかー170年の自由の歴史から始まった国」を寄稿し、遠藤が、国際学会 Carl Schmitt: Der Nomos der Erde - Kritik und Kreise des eurozentrischen Voelkerrechts -(2022)で招待講演 "Carl Schmitts Nomos der Erde und die ostasiatische Weltordnung" を、国際学会 Gastvortrag des Instituts fuer Rechts- und Verfassungsgeschichte der Universitaet Wien(2023)で招待講演 "Artikel 48 der Weimarer Verfassung: Hugo Preuss und Carl Schmitt im Streit ueber den 'Diktaturartikel'" を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題(0)ロールズ革命とスキナー革命以後における政治理論研究と政治思想史研究の対話と相互貢献の可能性の模索については、小田川と安武が前掲『啓蒙思想の百科事典』に寄稿した「ホッブズ」、「共和主義」、「『マキァヴェリアン・モーメント』(ポーコック)」の項目で、重要な知見を示すことができた。 (1)ロールズ革命以降の政治理論研究の思想史的な検討については、ショイアマンを中心とした市民的不服従論のサーヴェイを通じて、ロールズに代表されるリベラル・モデル以外に、ガンディーやキング牧師に代表される宗教的なスピリチュアル・モデル、ハワード・ジン、ハンナ・アーレント、ユルゲン・ハーバーマスらに代表されるデモクラティック・モデルという有力な学説があり、さらには東欧革命を背景とするアンドリュー・アレイトーとジーン・コーエンの市民社会論の影響も考慮する必要があるという知見を得た。 (3)政治思想史と政治理論の具体的な対話と相互的貢献の試みの検証については、まず安武と石川が「王のいる共和政」(中澤達哉編『王のいる共和政 ジャコバン再考』岩波書店、2022年)や「複合国家論」(岩井淳・竹澤祐丈編著『ヨーロッパ複合国家論の可能性 歴史学と思想史の対話』ミネルヴァ書房、2021年)をめぐって、西洋史研究者のグループと知見を交換し、今後の展望を示した。また遠藤は、フーゴー・プロイスおよびカール・シュミットのヴァイマル憲法48条論や緊急命令権に関する議論に取り組み、ワイマール共和国における大統領の非常権限の実像に迫る研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2022年度の成果を踏まえつつ、本研究の課題(0)ロールズ革命とスキナー革命以後における政治理論研究と政治思想史研究の対話と相互貢献の可能性の模索を念頭に、主に(2)スキナー革命以降の政治思想史研究の方法論的な検討と、(3)政治思想史と政治理論の具体的な対話と相互的貢献の試みの検証という二つの課題に取り組んだ。まずは政治思想史研究における「国際論的転回」を共通テーマとして安武が企画した、政治思想学会第30回大会(2023年5月、京都大学)に代表者も分担者も参加する予定である。 また、市民的不服従論については、遵法責務論(政治的責務論)の専門家を招聘し、研究会を開催する予定である。 それ以外には、計画通り、課題②と③を念頭に置きつつ、小田川が「政治理論とリベラリズムの歴史」について、安武が「政治理論と啓蒙の思想史」について、石川が「政治理論とアメリカ建国史」について、森が「政治理論と自由論の歴史」について、遠藤が「政治理論とドイツ公法思想史」について、それぞれ個別研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者の遠藤は、2023年度にヨーロッパへの調査旅行を予定していたが、物価高と渡航費用の高騰の現状を踏まえ、2022年度の直接経費200,000円を繰越し、2023年度分の経費と合わせて執行することを、所属先(松山大学)の事務方と相談の上、決定した。次年度使用額のうち、10,917円は、二人の分担者が多忙のため執行できなかった額で、これは次年度の研究会開催と図書費に活用する予定である。
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