研究課題/領域番号 |
22K01304
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小田川 大典 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (60284056)
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研究分担者 |
安武 真隆 関西大学, 政策創造学部, 教授 (00284472)
遠藤 泰弘 松山大学, 法学部, 教授 (30374177)
石川 敬史 帝京大学, 文学部, 教授 (40374178)
森 達也 神戸学院大学, 法学部, 准教授 (40588513)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 国際論的転回 / シュミット / バーリン / アーレント |
研究実績の概要 |
2023年度は、課題(0)ロールズ革命とスキナー革命以後における政治理論研究と政治思想史研究の対話と相互貢献の可能性の模索を念頭に、主に(2)スキナー革命以降の政治思想史研究の方法論的な検討と、(3)政治思想史と政治理論の具体的な対話と相互的貢献の試みの検証という二つの課題に取り組んだ。 (2)について。安武が、いわゆる「国際論的展開」を扱った政治思想学会研究大会(2023年5月27・28日)に企画委員長として関わった。「近代ヨーロッパの国際論的転回」「戦間期の国際政治思想」「領有権と市民権をめぐる政治思想」を冠する三つのシンポジウムが開催され、『思想のグローバル・ヒストリー』(2013)で知られるD.アーミテイジ氏による講演が行なわれた。『政治思想学会会報』第55号(2022年12月)に掲載された企画趣意書「2023 年度研究大会企画について」( http://www.jcspt.jp/publications/nl001_100.html#55 )と『政治思想研究第24号 政治思想の国際論的転向』(2024年5月)に掲載された「二〇二三年度研究大会企画について」において、安武はこの「国際論的転回」の全体像を簡潔に整理している。また『政治思想研究』同号には、安武によるアーミテイジの講演の邦訳「ガリヴァー苦悩記:近代世界の形成と破壊における条約」が収録されている。 (3)について。遠藤が、前年度にイタリアで開催されたカール・シュミット『大地のノモス』に関する国際研究集会で行った報告原稿をもとにした独語論文を執筆し、Mohr Siebeck 社が発行する Archiv des Pravnehistoricke studie 誌上で公刊した。また、活字にはなっていないが、森がアイザィア・バーリンについて、石川がハンナ・アーレントについて口頭で発表を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、主に(2)スキナー革命以降の政治思想史研究の方法論的な検討と、(3)政治思想史と政治理論の具体的な対話と相互的貢献の試みの検証という二つの課題について、研究を以下のように進めた。 (2)について。森が共訳者として、P.ケリー『リベラリズム』佐藤正志ほか訳、新評論、2023)を刊行した。また安武が、訳者として、D.アーミテイジ「ガリバー苦悩記」を『政治思想研究第24号』に寄稿した。 (3)について。遠藤が、Yasuhiro Endo, "Land und Meer, Himmel und Sonne: Eine Notiz zur ostasiatischen Weltordnung in Carl Schmitts Nomos der Erde," Archiv des Volkerrechts, Bd. 61 (2023), S. 283-286 を刊行した。 アーレントとバーリンについて、森が、Kei Hiruta, Hannah Arendt and Isaiah Berlin, Princeton University Press, 2021 の書評を『政治思想研究』第23号に、早尾貴紀『ユダヤとイスラエルのあいだ 新装版』(青土社、2023)についての書評を『公明新聞』2024年1月15日に寄稿し、口頭発表「アイザィア・バーリン研究の現在地:『思想の政治学』とその後」(神戸学院大学法学会2023年度第2回研究会、2023年6月20日、於神戸学院大学ポートアイランドキャンパス)を行なった。また、アーレントとアメリカ革命について、石川が、口頭発表「真理と歴史学の間:アメリカ革命史研究におけるアーレント問題」(シンポジウム「アーレントの革命論を読み直す」2024年3月23日、於関西大学東京センター)を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2022、2023年度の成果を踏まえつつ、本研究の課題(0)ロールズ革命とスキナー革命以後における政治理論研究と政治思想史研究の対話と相互貢献の可能性の模索を念頭に、(1)ロールズ革命以降の政治理論研究の思想史的な検討、(2)スキナー革命以降の政治思想史研究の方法論的な検討、(3)政治思想史と政治理論の具体的な対話と相互的貢献の試みの検証という三つの課題に取り組む。 主な計画としては、(2)と(3)を念頭に置きつつ、一昨年に Carl Schmitt zur Einfuhrung(Junius Verlag, 2021)の邦訳(藤崎剛人訳『カール・シュミット入門:思想・状況・人物像』書肆心水 、2022)が刊行された高明なシュミット研究者のラインハルト・メーリング教授を日本に招聘し、9月中旬に研究会を京都で開催すべく、準備を進めている。 また、(1)と(2)を念頭に置きつつ、社会思想史学会研究大会(2024年11月9・10日、於東北大学川内キャンパス)で、山岡龍一氏(放送大学)と田中将人氏(岡山商科大学)を招き、セッション「ジュディス・シュクラーにおける希望と記憶」(仮)の開催を予定している。 それ以外には、計画通り、(1)(2)(3)を念頭に置きつつ、小田川が「政治理論とリベラリズムの歴史」について、安武が「政治理論と啓蒙の思想史」について、石川が「政治理論とアメリカ建国史」について、森が「政治理論と自由論の歴史」について、遠藤が「政治理論とドイツ公法思想史」について、それぞれ引き続き個別研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定されていた研究会が一部実施できなかったために次年度使用額が生じてしまった。この分については、当該研究会を次年度に実施する際に執行する。
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