令和4年度にオーストリアとドイツの軍事史博物館についての考察を行ったのに引き続き、令和5年度はイギリスの国立陸軍博物館を対象とした研究活動をおこなった。そのため、同年5月から6月にかけてロンドンに赴いて同博物館ほか帝国戦争博物館など関連施設への取材及び情報収集を行っている。同地での情報収集後に資料を分析し、論文を執筆する予定であったが、国立陸軍博物館の展示の一部(4階フロア)がリニューアル工事に入ってしまい、もっとも知りたい部分について十分に取材することができなかったことから、同博物館については翌年度に追加取材をおこなうこととし、論文の執筆も一年先延ばしすることにした。なお、イギリスの国立陸軍博物館の考察結果については、三重県内の研究会で報告する予定であったが、これについても翌令和6年度に持ち越しとした。 そこで予定を変更し、本研究の最終段階で行う予定であった単著の原稿作成を先に行うこととし、現時点で執筆可能な総論にあたる第一章「軍事博物館のかたち」の原稿作成を行った。この作業のために、軍事私学関連の研究書のうち、軍事と国民統合に関わる部分について重点的に分析作業を行ったほか、昨年度の現地取材で得られた資料などをもとにして現代ヨーロッパの軍事博物館に変化を迫る政治的因子の性質についての考察を行った。これによって、軍事博物館の政治的性質についての一般的考察を行うことができた。その成果を受けて、上記第一章の原稿はほぼ完成し、令和6年度以降は各論として各国の事例の部分を執筆する予定である。
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