研究課題/領域番号 |
22K01409
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
結城 剛志 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (40552823)
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研究分担者 |
泉 正樹 東北学院大学, 経済学部, 教授 (90517038)
江原 慶 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (20782022)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 計算貨幣 / バーミンガム学派 / マルクス学派 / ポスト・ケインズ学派 / 計量テキスト分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,計算貨幣論に関する歴史的な考察を深めてきた3学派(バーミンガム学派,ポスト・ケインズ学派,マルクス学派)の一次資料を主要な検討対象として,テキスト解釈の積み重ねによる質的分析と「計量テキスト分析」(テキストマイニング)による量的分析とを行い,「計算貨幣論はどのように受け継がれてきたのか」を,各学派の計算貨幣論の理解と相互関係を立体的に再構成することを通じて明らかにすることにある。 第1に,バーミンガム学派の計算貨幣論の受容過程,理論的政策的な展開過程を分析する。第2に,ポスト・ケインズ学派の計算貨幣論の形成に貢献した主要文献を分析する。第3に,『資本論』関連草稿の通時的分析を通じて,マルクスの計算貨幣論に対する評価の変遷を剔出する。以上の質的・量的分析を通じて,現代の貨幣論の多様性がどのように形成されてきたのかを解明する。 令和4(2022)年度の研究実施計画は,(1)バーミンガム学派の膨大な一次資料のリスト化とデジタルデータ化,文献調査・収集,(2)ポスト・ケインズ学派の計算貨幣論に関連する文献のテキストデータ化,(3)マルクス資本論とその主要草稿(MEGA第II部門)のテキストデータの作成と計量テキスト分析の実施である。 本年の計画のひとつの難所であるマルクスの文献のテキストデータの作成と計量テキスト分析を実施し,その成果をディスカッションペーパーにまとめ,複数の研究会で発表した(3)。計量テキスト分析の結果から,従来の質的分析の一解釈として定着していた弁証法的に体系化された理解とは異なる用語の関係が示唆された。また,ポスト・ケインズ学派の貨幣論関連文献のテキストデータの作成と計量テキスト分析の試論的な成果もディスカッションペーパーで発表した(2)。これらの研究成果を通じて,計量テキスト分析を実施する際の作業手順や分析ツールの理解を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4(2022)年度の研究実施計画を概ね達成することができた。なかでも,テキストデータの作成に多くの労力と費用を費やさなければならないマルクス『資本論』とその主要草稿のテキストデータを作成し,計量テキスト分析を実施した成果は大きいといえる。 ポスト・ケインズ学派に影響している貨幣論文献のテキストデータの作成と分析も試論的に実施した。 バーミンガム学派の膨大な一次資料のリスト化は,作業量が膨大になりすぎることが判明したため、主要文献のリスト化のみを行った。また,ロンドン,バーミンガム地区の図書館・資料館での資料調査は,予算的な制約から実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和5(2023)年度の研究実施計画は,(1)令和4年度に実施したマルクス『資本論』の計量テキスト分析の結果を経済学史学会で発表する,(2)バーミンガム学派の計算貨幣論に関して計量テキスト分析を行う,(3)ポスト・ケインズ学派の計算貨幣論に関して計量テキスト分析を行う,の3つである。このうち(2)は,資料調査が遅れているため,資料調査を実施し,計算貨幣論に関連する文献がどの程度存在するのかを明らかにすることから始める。バーミンガム学派の言論活動が書籍や論文の他に,パンフレット,機関誌,新聞等に分散していることもあり,それらを計量テキスト分析に付せる形式に整理することにかなりの労力と費用がかかることが予想される。令和5(2023)年度の調査を行う過程で作業量や作業手順を慎重に検討していかなければならない。(1)(3)は計画通りに進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:計量テキスト分析のテキスト整形作業に積み残しが生じているため。 使用計画:デジタルテキスト化を行う上で必要な機器の購入,テキスト整形作業の積み残しを解消するために使用する計画である。
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