研究実績の概要 |
本年度は、C. Nyland & R. W. Dimand編のThe Status of Women in Classical Economic Thought, Edward Elgar Publishing, 2004やM. Evans他編 The SAGE Handbook of Feminist Theory, 2014所収のE. Hanappi-Egger, “‘Homo Economicus’ and ‘His’ Impact on Gendered Societies”などを参照しつつ、これまでの経済学史およびフェミニスト(政治)経済学において、女性がどのような経済的存在(労働者に含まれるのか、家事労働の担い手としてか、無償労働の担い手としてか)として描かれてきたのかの再検討を行なった。 その上で、ベンサムが自らの経済学の先駆者にして最重要人物と考えたアダム・スミスの『国富論』、さらにその前に構想されていた『法学講義』において女性の法的地位などについて詳細に行なっている検討を分析し、とりわけ民法領域における女性の規程を考察した。その上で、ベンサムの経済思想における女性の位置づけを考察するために、市場の外部=家庭へと女性が放逐された点を、社会規範からの逸脱者を放逐する論理から検討し、コロナ禍ではあったが、ロンドン大学UCL所蔵のベンサム草稿を検討できたのはありがたく、それに加えて、ベンサムのOf Sexual Irregularities, and Other Writings On Sexual Morality(OUP, 2014)の諸テクストを検討した。
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