研究実績の概要 |
本年度は、G. Berik, E. Kongar編のThe Routledge Handbook of Feminist Economics, 2021やC. フェデリーチ『キャリバンと魔女』などを参照しつつ、いわゆる本源的蓄積において共有地の廃止とワンセットになった私的所有権の強化の過程で、女性が魔女狩りなどを通じて、社会や市場、国家から排除されてきた経緯とその要因に関する議論を参照し、ロンドン大学University College, London所蔵のベンサム草稿およびベンサム・プロジェクトによるトランスクリプトの検討を行なった。ベンサムが、自らの功利主義に基づく女性の排除の問題を批判していたことを読み解く上で、必要な作業となった。 またベンサムの影響を受けたR.オーウェンの家事労働の社会化といった論点を含む協同組合思想に関しても検討を進め、ウェールズのニュータウンにあるオーウェン博物館を訪問し、オーウェンの手紙をはじめとして貴重な資料を閲覧した。それらの成果を盛り込んだものを、2023年11月11日に市場と社会研究会(立教大学)で「経済/経済学からの排除と包摂:食・女性・エコロジー」と題して報告を行ない、経済史や政治経済学研究者からコメントをもらい、研究文献に関する示唆を得た。 なお本研究プロジェクトにも関連する上記ハンドブック所収の論文2本(「ケイパビリティ・アプローチ」「人権とフェミニスト経済学」)の翻訳を進めた。
|