研究課題
本研究では感染症まん延下における家計消費の実態を明らかにします。未曽有の事態でありながら消費への影響を即時に分析できない場合、政策当局者はどの家計に、どのタイミングで、いくら給付すべきなのかという問いに答えることができません。本研究では、どのような家計がどの程度、感染症まん延の影響を受けたのか、消費水準等を分析することで明らかにすることを目指します。本年度も引き続き、新型コロナウイルスまん延によるマクロ経済指標の落ち込みの背景について分析を深めるとともに、新型コロナウイルス感染症による経済的影響への緊急経済対策の一施策として支給された特別定額給付金が家計消費に与えた影響について分析しました。具体的には家計ごとに支給された特別定額給付金の総額を推計した上で、支給された特別定額給付金を各家計がいくら消費したのかについて個票データを用いることで識別しました。ここでは特に、家計ごとに限界消費性向が異質的である可能性、及びこの背景として家計ごとの属性の違いがある可能性に焦点を当てました。分析の結果、予期せぬ所得ショックである特別定額給付金の支給が家計消費に与えた影響は異質的であることが明らかになりました。より具体的には、家計ごとに限界消費性向に強い異質性があり、特に主観的割引率の大きさや世帯主の年齢が限界消費性向の大きさを規定する可能性があることが分かりました。この結果は消費のライフサイクル理論に強い示唆を持つ結果です。
2: おおむね順調に進展している
論文が複数公刊されるなど、計画はおおむね順調に進展しています。
今後も引き続き成果を国際査読雑誌に公刊させることを目指し研究を遂行します。
研究費を効率的に使用した結果、次年度使用額が生じました。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Journal of Money, Credit and Banking
巻: 55 ページ: 1609~1632
10.1111/jmcb.12944
Journal of the Japanese and International Economies
巻: 70 ページ: 101276~101276
10.1016/j.jjie.2023.101276