研究実績の概要 |
本年度は,基本モデルの完成に注力した. 論文``Country- and sector-specific trade liberalization, directed technical change, and long-run growth''では,国及び部門特殊的な貿易自由化が世界的な経済成長に与える影響を調べるために,Acemoglu (2002)の1国有向技術変化(directed technical change, DTC)モデルに,熟練労働と非熟練労働のいずれかの生産性を高める差別化された機械を貿易する2つの国を導入する形で拡張した.2種類の労働間の代替弾力性が1より大きいとき(そしてそのときにのみ),ある国のスキルプレミアム(熟練労働の非熟練労働に対する相対賃金率)は貿易相手国による熟練労働増加的機械部門の貿易自由化により高まるが,自国による同部門の貿易自由化により低まることが分かった.対照的に,均斉成長率は任意の国・部門における貿易自由化により高まることも分かった.対称的な均斉成長経路の周りで得られた以上の定性的結果は,現実のデータを再現する非対称的な均斉成長経路の周りでも同様に得られることも分かった. 本論文は,2023年8月末にスペイン・バルセロナのBarcelona School of Economicsにて行われるEuropean Economic Association (EEA) 2023 Annual Congressに採択され,発表される予定である.
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