研究課題
本研究は,現在の新型コロナウイルス感染症パンデミック(以下,コロナ危機)が少子化に与える短・中期的インパクトを検証する.具体的には,公衆衛生上の危機とその政策対応による所得の減少や就業の不安,社会的つながりの希薄化が出産の意思決定に与える直接的・間接的影響を,大規模追跡調査(2020年8月~)を用いて明らかにすることである.2022年度は,コロナ危機が妊娠控えを引き起こしたのか,引き起こしたとしたならば危機のどの要因が妊娠控えをもたらしたのかを分析した.日本全国を対象として2020年,21年に実施した「日本におけるCOVID-19問題による社会・健康格差評価研究(JACSIS)オンライン調査」より,妊娠の意思がある女性768人(18歳~50歳)のデータを分析し,約2割の女性が妊娠を先延ばしにしていたことを明らかにした.さらに,その要因がCOVID-19の感染に対する恐怖や不安ではなく,コロナ禍での所得の減少や将来への家計不安であり,その影響は2021年に特に強くみられた.パンデミック収束後においても経済不安の解消を進めることが重要であることが示唆されており,妊娠延期をした人が今後出産するかはさらなる研究において検討が必要である.
2: おおむね順調に進展している
データ収集も計画通り進んでおり、概ね順調である。円高や航空券の高騰により、今後学会発表等については予算とバランスをとったり、外部資金の獲得が必要になることが予想される。
当初の計画通り進める予定である。なお、現在の政府の少子化対策の影響についての評価も加えていく必要がある。
2023年度に国際学会での報告を予定しており、そのための資金を残している。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Biosocial Science
巻: First View ページ: pp. 1 - 13
10.1017/S0021932022000451