研究課題/領域番号 |
22K01479
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研究機関 | 旭川市立大学 |
研究代表者 |
大野 成樹 旭川市立大学, 経済学部, 教授 (50333589)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 新興国 / 伝統的・非伝統的金融政策 / 波及効果 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究は、新興諸国の個別の金融政策の分析を行った。特にロシアは、2022年2月24日に開始したウクライナ侵略に関連して、日米欧等の西側諸国から経済制裁を科されている。こうした状況において、ロシア中銀がいかなる政策を採ったかを考察することは、米国の金融政策による影響を分析する上で必要不可欠であると考える。そこで、当該年度の研究では、ロシアの金利・為替政策を、法令等を含め、包括的に調査した。 キーレート操作について。ロシア中銀はルーブルの暴落と物価上昇圧力を抑制するために、2月28日の臨時理事会でキーレートを20%に引き上げた。3月半ばよりルーブルレートが安定し始めたことを受け、ロシア中銀は、キーレートを引き下げ続けたが、2023年には、供給能力を上回る需要の伸び、人手不足による賃金の上昇に伴うコスト上昇、ルーブル安による物価上昇圧力が強まったため、キーレートは上昇基調にある。 外国為替市場関連政策について。ロシア中銀は金融市場の安定化を図るため、2022年2月末より、居住者は、ロシア連邦外にある銀行の自分の口座に外貨を送金することが禁止された。また、非居住者との外国貿易契約に基づいて居住者の銀行口座に入金された外貨の一定割合は、国内の外国為替市場で強制的に売却されることになった。同政策は、一旦廃止されたが、2022年末頃よりルーブルの対米ドルレートは徐々に減価し始めたことを受け、2023年10月の大統領令により再導入された。 国際銀行間決済について。2014年のクリミア半島併合に対するロシア制裁後、ロシア中銀はSPFSを開発した。2022年におけるSPFSの取引件数は、2021 年と比較して 3 倍以上に増加した。また、貿易決済通貨の割合は、米ドルおよびユーロが大幅に低下する一方、ルーブルや人民元が増加している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、新興諸国の金融政策の調査が進捗している。また、各国のデータの取得および整理も進んでおり、ベクトル自己回帰分析(VAR)やグローバルVARを用いて、試験的にモデルを構築し始めている。インパルス応答分析による推計もすでに実施し始めており、仮説に基づいた結果が得られるかを調査中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後もブラジル、ロシア、インド、中国の金融政策の状況や金融市場の動向を調査する。また、各市場のデータを必要に応じで追加し、ベクトル自己回帰モデルを構築する。2000年代初頭から現在までのデータを一括して取り扱うと、構造変化時点の問題が生じる可能性があるため、時期区分を検討する。その際、時期区分がアドホックとなることを回避するため、統計的に構造変化時点を確認する手続きをとる。構築したモデルを用いて、インパルス応答分析を行い、米国の金融政策の変化が各新興国の金融市場にいかなる影響を及ぼしたのかを推計する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、研究成果の一部を国際学術雑誌に投稿中である。もし受理された場合は、オープンアクセスによる論文公開を希望しているが、円安の影響もあり、同費用が40万円を超える可能性がある。論文の受理がいつになるか不明であるため、ノートパソコンの購入を後ろ倒しにすることで対応したが、現在も査読が継続している。以上の状況により次年度使用額が生じた。
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